MGMのビル・ホーンバックルCEO(左)と吉村洋文・大阪府知事(時事通信フォト)
大阪・関西万博が開かれている大阪・夢洲の土地をめぐっては、「第2の森友学園」と指摘される問題が持ち上がった。
米国MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスでつくる事業会社「大阪IR」に対し、カジノを含む統合型リゾートが建設される市有地が「隣接地の3分の1」という格安の評価で貸し出されているのではないかとの疑惑だ。
発端は朝日新聞の報道だった。IR用地の隣に建設されている関西電力子会社の変電所の土地の評価額について2024年4月、第三者の不動産鑑定士らで構成される大阪市の諮問機関「市不動産評価審議会」が「1平方メートルあたり約33万円」で承認していたという内容だ。
この土地評価の何が問題なのか。全国紙社会部記者が解説する。
「大阪市がIR業者に夢洲の土地を貸し出すために提示した評価額は『1平方メートルあたり12万円』でした。2021年当時の鑑定とはいえ、隣り合う変電所の評価とはおよそ3倍の開きがあります。IR用地の鑑定はこれまで“不当鑑定”と取り沙汰されていたため、疑惑が改めて強まったのです」
IR用地の評価額が「安すぎる」との疑惑は、当初、鑑定に至る過程に不自然な要素が見つかったことから浮上した。
大阪市が発注したIR用地の不動産鑑定で、4社のうち3社がそろって1平方メートルあたりの土地価格を12万円、その土地の運用で期待される利回りは4.3%、そこから導かれる月額賃料は1平方メートルあたり428円という同額を算出。通常ではあり得ない「奇跡の一致」と批判されながらも、大阪市側は「賃料は適正」だと繰り返し強調。この鑑定にもとづいてIR用地の貸し出しが決まった。これを不服として、複数の住民訴訟が起こされる展開となっている。
弁護団の1人である加苅匠・弁護士が語る。
「IR施設の予定地の目の前には大阪メトロの夢洲駅ができています。駅前の一等地です。ところが、大阪市が使った鑑定は駅の完成前だったから最寄り駅は3キロ以上離れた対岸の駅『コスモスクエア』になっていました。それでは鑑定が低くなるのは当然です。そのやり方を見ても、市がIR事業者を優遇しようとしていたのは明らかです。
夢洲駅は万博前から開業することが決まっていて、私たちはそれを前提に第三者の不動産鑑定士に依頼しました。鑑定結果では、IR用地の評価額(賃貸料)は大阪市の2倍以上になりました。私たちの鑑定と市が決めた賃料の差額はIR事業者と契約した2058年までの30年あまりで1044億円と計算されます。本来得られる賃料が入らないのだから、大阪市民がそれだけ損害を被るということです」