米国産のコメ輸入が日本のコメ市場活性化につながる可能性も(トランプ大統領/Getty Images)
高止まりするコメ価格が日本人の食卓を苦しめている。供給不足が叫ばれるなか、政府内では米国産のコメの輸入を拡大する案が浮上してきた。流通する量が増えれば価格が安くなるはずだが、農林水産省はこれに強く反対する。主食として保護されてきた「国産米」を今後も守るべきと訴えるのだが、その主張は本当に正しいのか──。【前後編の後編】
■前編記事:【トランプ輸入米】米国産コメ輸入拡大は「関税交渉カード」と「国内コメ不足解消」になる一石二鳥プランか それでも輸入米の拡大を阻止したい農水省の思惑
農家の高齢化が進むなかでどうやって稲作を守るのか
米国産米の輸入拡大は長期的には国益を損ねるという阻止派の主張に対して、農業経営学が専門の大泉一貫・宮城大学名誉教授は真っ向から反論する。
「関税をなくして競争に晒されないと、日本の稲作は崩壊するのではないかと危惧しています。
農水省は関税で守り、生産調整でコメの価格を高止まりさせ、補助金をばら撒けば日本のコメはこの先も安泰だろうと考えている。零細農家を保護することが、国産米を守ることにつながるという理屈です。
しかし、現実を全く見ていない。現在、稲作農家は55万戸ですが、政府の支援があっても毎年5万戸がやめている。零細農家のほとんどが兼業農家であり高齢者で、このままではどんどんコメ作りをやめていく流れは変わりません」
実際、佐賀県の70代後半の農家はため息交じりにこう話す。
「小規模な農家は、コメがいくら高騰しても固定費や設備費の負担のほうが大きく儲からない。時給換算したら最低賃金を下回るけんね。地区にある50軒くらいの農家で60歳以下は3人だけ。若い人はやりたがらんよ」
農家の高齢化が進むなかで、稲作をどうやって守ろうというのか。農水省に聞くと、「稲作は機械化が進んでいるので、他の農業、畜産などと比べると、体力的には高齢者でも担っていけるものです。そうした一つ一つの産地の現状を見て、どうやればいいかということを考えて進めています」(農産局農産政策部企画課)と回答した。