「東京府中の試験場で外免切替をしました」というSNSの書き込み。写真の免許証の住所欄は都内のホテルが書かれている(提供:加藤久美子)
外免切替の学科試験は「○×式10問中7問正解」で合格
一方で、外免切替は数々の問題点も指摘されている。外国籍の人が手続きするには在留カードや住民票が必要だが、短期滞在者の場合、「一時滞在証明書(自治体によっては「居住証明書」など)」がその代わりとなる。しかも、記載する住所は、滞在するホテル等の宿泊施設でも通用してしまうのだ。観光ビザ等で入国した外国人も利用できる。
「訪日旅行客でも滞在先のホテルで『一時滞在証明書』を発行してもらえば、ホテルを住所にして申請することができます。この点は国会でも問題視されていました」(加藤氏)
ホテルなどの一時滞在所を住所として認めると、交通事故発生時の連絡や、交通違反の反則金納付などに支障をきたしかねないと懸念する声もある。開会中の国会でもたびたび取り上げられ、3月3日の衆院予算委員会では日本維新の会の三木圭恵議員が「短期間しか日本に滞在しない外国人でも日本人と同じ材質形状、見た目の全く同じ免許を与えてしまうということが、私はちょっと信じられない行動だな、と」と発言して政府の姿勢を追求した。
さらに多くの識者が問題視するのが、「外免切替の学科試験が簡単すぎる」という点だ。日本国内で運転免許を取得する際は、全95問ある○×式の学科試験を受け100点満点で90点以上なら合格となるが、外免切替の「知識確認」は○×式でわずか10問中7問正解で合格となる。
「二択問題なので答えは〇か×のどちらかで、日本の学科試験と比べて問題数も桁違いに少ない。テレビのインタビューで、『ものすごく簡単だった』『幼稚園生の問題みたい』『全然勉強してなかったけど合格した』と語る外国人受験者もいました」
当然、簡単に合格できるのであれば、事故リスクは高まる。2月4日の衆院予算委員会では、立憲民主党の大西議員からこの点を指摘された坂井学国家公安委員長が「学科試験は私が見ても簡易、安易なものであると思う」と答弁する一幕があった。一般に日本で運転免許を取得する際は自動車教習所に通って第一段階、第二段階を通過し、卒業検定を合格した上で学科試験に臨む。その過程で何度も落ちるケースがあるのに比べて、外免切替はハードルが低いのではないかとの指摘もある。
2月4日の衆院予算委員会で坂井国家公安委員長は「100%の制度はない。より改善していくという観点から、他国の制度なども勉強しながらしっかり検討する」とも答弁した。外免切替の注目が集まるなか、問題点を把握し、制度の改善を図る政府の姿勢が求められる。
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取材・文/池田道大(フリーライター)