「外免切替」が急増する背景には、日本社会が抱える構造的問題がある(イメージ)
外国で取得した運転免許を日本のものに切り替える「外免切替」制度。国会でも様々な問題が指摘されているが、同制度を利用する外国人は今後ますます増えると想定される。その背景にあるのが、日本社会に待ち受ける深刻な「労働力不足」だ。フリーライターの池田道大氏が、「外免切替」をめぐる問題に凝縮された日本社会の課題についてレポートする。
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外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外国免許切替(外免切替)」。年間取得者数は2014年の3万381人から2024年は7万5905人となり、過去10年間で2.5倍に増加した。
一方で 知識確認(学科試験)が○×方式で10問中7問正解すれば合格という試験の簡易さや、訪日旅行客が滞在先のホテルを住所にして申請できることなどが批判の的になり、開会中の国会でも国会議員による質疑が相次ぐ。
それでも今後ますます外免切替を利用する外国人は増えそうだ。背景には、少子高齢化が止まらない日本社会が抱える人手不足がある。国内の生産活動の中心を担う生産年齢人口(15〜64歳の人口)はピークだった1995年の8716万人から減少を続け、2024年に7372万8000人になった(総務省。2024年10月1日現在)。国立社会保障・人口問題研究所の全国将来人口推計(2023年発表)によると、2032年に同人口は7000万人を割り、2070年にはピークの半数近い4535万人になるとされる(出生中位推計の場合)。
生産年齢人口の急減とともに人手不足が顕在化した。筆者自身、普段街で「人手が足りないので営業時間を短縮します」との張り紙を見かけたり、ワンオペの飲食店で長く待たされたりするなど、人手不足を実感する機会が増えている。
厚生労働省の『令和6年版 労働経済の分析』(労働経済白書)によると、2023年における求人の充足率はこの半世紀で最も低い水準で、今後想定される人口減少を踏まえれば、人手不足が「長期的かつ粘着的」に続く可能性があるという。
特に深刻なのが物流業界だ。2024年4月からトラックドライバーの年間時間外労働時間が960時間に制限されたことにより、ドライバーの人員が不足する「2024年問題」が発生した。国土交通省の試算では今後、人手不足がさらに悪化し、2028年度までにバスやタクシーなどを含めた自動車運送業界で約28万8000人のドライバーが不足する見込みだ。
物流を担う人員が足りないと、輸送に時間がかかることによる「コストの上昇」や企業間物流が滞ることによる「サプライチェーンの分断」など、様々な影響が生じる恐れがある。そこで人手不足を補うために政府が目を付けたのが外国人労働者だ。2024年3月、外国人労働者の在留資格である「特定技能」の分野に、「自動車運送業」が加わることが閣議決定された。