難関大学合格を謳う「カンニング業者」のSNS広告(廣瀬大介氏提供)
「日本の大学には簡単に入学できる」──中国では、そんな噂が流れているという。背景に大学受験の「カンニング業者」が暗躍している可能性が浮上した。中国事情に詳しいフリーライターの廣瀬大介氏が業者に接触し、その手口をレポートする。【第1回。全文を読む】
「まさか本当に合格する人がいるとは」
〈日本語試験や英語試験で高得点を保証します。もう一つは私たちが持っている人数限定の合格枠を使って大学合格保証もします。例えば、早稲田や慶應、MARCHなら明治、立教、青山学院、中央、法政です〉(日本語訳)
これは小紅書(中国版インスタグラム)で点数保証や合格保証を謳う中国人業者との会話の一部である。現在、中国人向けのSNSは日本の有名大学への留学を斡旋する業者の宣伝で溢れている。
「MARCH合格保証」「名門大学に面接のみで合格保証」という投稿や、日本の大学に留学する上で受験が必須となるJLPT(日本語能力試験)やEJU(日本留学試験)の点数保証を謳うものが確認できた。
現在、在日中国人留学生数は13万人を超え、外国人留学生全体の約40%を占める。大学受験者数が毎年1000万人を超える中国では難関大学の倍率は1000倍以上とも言われている。
一方、日本の難関大学の倍率は概ね5倍前後。早慶上智やMARCHのネームバリューは中国でも高く、留学や移住先の候補に日本を選ぶ中国人が増えている。ある中国人留学生はこう言う。
「中国では特に早稲田大学が有名です。100年以上前から中国人留学生を受け入れ、中国共産党の創設者の一人である陳独秀も早稲田に留学しています。それに今、中国は就職難で雇用が安定した日系企業を目指す人が増えている。日本の有名大学を卒業してそのまま日本で就職してもいいし、帰国しても中国の日系企業に就職しやすい」
こうした日本での受験ブームに便乗したのが、冒頭のような「カンニング業者」のようだ。