米国産輸入食品の違反事例とは(イメージ)
「トランプ関税」の一環で、米国は日本に対し農産物の輸入拡大を強く求めているが、市場目線の議論ばかりで肝心の「安全性」が置き去りにされている。テレビ・新聞が報じない、日本の衛生基準に違反した米国産食品の輸入実態をレポートする。
日本が肩代わり
米国は日本にとって最大の食品輸入相手国である。農水省がまとめた「農林水産物輸出入概況」(2024年)によると、その輸入金額は「とうもろこし」「大豆」「牛肉」「豚肉」「小麦」の順に多い。注目は、その“依存度”だ。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が言う。
「2024年は日本に輸入されるとうもろこしの77%、同じく大豆の65%が米国産でした。とうもろこしは食用のほか、家畜の飼料用としても多く使われていますが、大豆は食用油の原料として使われたり、納豆などにも加工され、日常的に広く消費されています」
さらに、輸入牛肉の37.9%、輸入豚肉の23%、輸入小麦の38.5%が米国産だった(いずれも金額ベース)。
「米国産の牛肉や豚肉は国産よりも安価な食用肉として人気が根強く、米国産小麦はパンをはじめ小麦製品に広く活用されています」(同前)
折しもトランプ関税をめぐり、米国は日本に農作物のさらなる市場開放を要求。5月1日の日米閣僚協議では、赤沢亮正・経済再生担当相がとうもろこしや大豆の輸入拡大を提案した。今後、報復関税をかけ合う中国への輸出が減る分を日本が肩代わりする形となる。これまで以上に日本上陸の機会が増える可能性がある米国産食品だが、見逃されてきたのが「安全性」だ。
「一部の中国産や韓国産食品の衛生問題はテレビ、新聞で取り上げられることが多いのですが、米国産食品の安全性はメディアで検証される機会がほとんどありませんでした。世界最大の食料輸出国ということもあり、どこかで安全だと思い込んできたのでしょう」(同前)
だが、実態は違う。米国産食品でも、輸入時に日本の食品衛生法に違反する事例が多数確認されているのだ。
「厚生労働省の輸入食品監視統計(2023年度)では、国別の食品衛生法違反で米国は中国(206件・27%)に次ぐ第2位(100件・13.1%)でした」(同前)