年寄名跡は協会一括管理のはずだが…
年寄名跡を取得している現役大物力士の引退に伴って、その名跡を借りていた親方が別の名跡を探さなくてはならなくなるわけだ。こうしたケースは珍しくない。
「今回、新たなに『錦島』を襲名した千代鳳は、もともと『佐ノ山』を襲名していたが、所有者の千代の国の引退が近づくと、『大山』への変更が必要になり、今度は『大山』を所有する北勝富士の引退に備えての再変更となった。
他に現役力士としては遠藤が『北陣』を所有しており、現在は元前頭・天鎧鵬が『北陣』を襲名しているが、遠藤の引退が近づけば変更を余儀なくされる」(協会関係者)
所有者と違う者が襲名する年寄名跡は「借株」と呼ばれるが、実は協会のルールとして表向きは認められていないものだ。
これまで「年寄名跡」取得のルールは何度か変更されてきた。譲渡や貸借に際して、多額の金銭が動くことが問題視されてきたからだ。なかでも大きな改革は譲渡代金の申告漏れ問題に端を発した1998年の制度改革だった。取得要件が定められ、準年寄制度創設とともに借株禁止などが決まった。
「しかし、当時設けられた5年間の猶予期間を経ても借株の実態は変わらなかった。2014年には相撲協会が公益財団法人に移行。税制上の優遇措置を受ける公益法人となる以上、協会員らの不透明な金銭のやり取りを認めるわけにはいかず、年寄名跡は個人所有から協会の一括管理とすることに決まった。
年寄名跡が協会のものとなれば、親方同士の金銭による売買ができなくなり、借株もできないはずでしたが、ルールのほうが有名無実化。今も実態としては個人が所有するようなかたちになっている」(ベテラン記者)