個人投資家が対応すべきこと
まず、自分が保有している企業が、上場維持基準を満たしているかを確認しましょう。企業のIR情報や東証の公式サイトで情報公開されています(*参考:改善期間該当銘柄等一覧)。また、改善計画の内容やその進捗状況もチェックすることが重要です。中には、真剣に改善に取り組んでいる企業もあれば、あまり進展が見られないケースもあります。
さらに、仮に企業が上場廃止となった場合、株式の売却が困難になるリスクもあります。取引量が激減し、思ったような価格で売れなくなる可能性があるため、そうしたリスクも念頭に置いておく必要があります。
一方で、これは投資チャンスにもなります。以前、この連載でグロース市場の上場維持基準が厳しくなるため、自社株買いや配当など株主還元を行う可能性があると紹介しました。それと同様に、いよいよお尻に火がついた企業は、なんらかの施策を行うのではないでしょうか?
考えられる対策は、自社株買い、増配、優待拡充など株価にとってポジティブなものになるはずです。ただ、流通株比率を高めるために、大株主の売り出しなど、短期的には株価にネガティブなアクションもあるかもしれないため、その点は注意が必要です。
今回の経過措置終了は、東証がより透明で健全な市場づくりを進める一環ですが、投資家側にも「選別の目」が求められる時代になったと言えるでしょう。今後は、単に「上場しているから安心」ではなく、その企業の財務状況や市場での評価をしっかり見極める力がますます重要になりそうです。
今回のまとめ
・まずは、保有銘柄の上場維持基準への適合状況を確認
・企業の改善計画や株主還元策の動きを見極めよう
・短期的なネガティブ材料や上場廃止リスクにも備えよう
【プロフィール】
藤川里絵(ふじかわ・りえ)/個人投資家・株式投資講師・CFPファイナンシャルプランナー。2010年より株式投資をはじめ、主に四季報を使った投資方法で、5年で自己資金を10倍に増やす。普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため活動し、DMMオンラインサロン「藤川里絵の楽しい投資生活」を主宰。本稿の関連動画がYouTubeにて公開中。