違法民泊摘発のため晴海フラッグに立入調査に入る月島署の捜査員ら
東京都の一大プロジェクトとして東京2020オリンピックの選手村(中央区)を改修して売り出されたマンション群「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」。2024年1月に入居が開始されたが、一帯にはある異変が起きていた。中国人絡みのトラブルが続出、ヤミ民泊が横行し、それを阻止しようと「禁止」の張り紙が溢れる状況となっているのだ。ジャーナリスト・赤石晋一郎氏がレポートする。【全3回の第3回。全文を読む】
警察の調査に「親戚です」
晴海フラッグにはいくつかの違法民泊グループがあると見られているが、その一つとして警察も注視しているのが、中国系企業Y社だ。
所在地は上野の雑居ビルの一室。看板はなく小さな共同メールボックスに名前があるだけ。Y社の前代表は中国人、現在の代表は日本人名のX氏となっているが、不動産業者によれば「X氏は中国語訛りの拙い日本語を話す」という。
ある捜査関係者は「X氏は警察からマークされている」と語る。複数の捜査情報を整理すると、X氏の“違法民泊のスキーム”は次のようなものであることが分かった。
晴海フラッグでは投資目的で購入された部屋が多数あると社会問題化した。居住実態のない部屋が3割近くあると言われ、こうした空部屋の多くは賃貸募集がかけられている。X氏らはそこに目を付けて、サブリースで10部屋前後を一括で借り上げている。そこで中国人観光客相手の違法民泊を行なっているのではないかと見られているのだ。
「X氏自身も晴海フラッグに2部屋を所有し、そこに居を構え中国人で構成されている違法民泊部隊への指示を行なっている。X氏はロン毛の優男風情で元会社員という経歴。現在はテスラを乗り回すなど、かなり羽振りのいい生活をしているようだ」(前出・捜査関係者)
4月15日にはX氏が管理する部屋を対象に、月島署と保健所の捜査員約10名がチームを組み、違法民泊摘発のための立入調査が行なわれた。
「捜査員が各住戸を訪ね歩いたがほとんど応答がなく空振り。唯一、扉が開いた部屋も、出てきた中国人に『親戚です』と言われてそれ以上は手出しが出来なかった」(同前)
違法民泊問題に詳しいマンション管理士の飯田勝啓氏が指摘する。
「違法民泊の利用者には『ハウスルール』という利用の際の規定があり、『外部からの来訪には出ない』や『外部の者と接触する際は“親族”と答える』などと規定されている。ただの訪問ではなく、警察が本腰を入れて捜査を行なわない限り撲滅するのは難しい。違法民泊は5年前に厳罰化(旅館業法違反)され激減した。晴海フラッグのように野放しになっているケースは珍しい」