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ビジネス
「命の値段」の不都合な真実

人が亡くなったときの「賠償金」に影響する死亡慰謝料と逸失利益 「主婦や高齢者の死亡慰謝料は低くなりやすい」「就労してない人の逸失利益は賃金センサスを元に算出」

死亡逸失利益の算出法

死亡逸失利益の算出法

逸失利益は「賃金センサス」をもとに算出される

 より大きな金額の差が生じるのが「逸失利益」だ。

「逸失利益とは、被害者が死亡しなければ、その後働くことによって得られたはずの利益のこと。被害者の性別や年齢、職業が異なれば得られる収入にも差が出るので、逸失利益と認められる金額にも差が生じます」

 すでに働いている人が亡くなった場合、基本的に実際の収入をもとに、逸失利益を算出する。

 問題は、児童や学生などまだ就労していない人たちのケースだ。基準となる収入がなく将来の職業も未確定のため、厚労省がまとめる「賃金センサス」をもとに逸失利益を算出する。

「賃金センサスは、政府が毎年発表する『賃金構造基本統計調査』の結果をもとに作成される資料で、労働者の職種や学歴、性別、年齢などに応じた賃金実態を表します。未就労者は性別や学歴、年齢などを考慮してどの賃金センサスを用いるかを検討しますが、統計上は男性労働者の方が女性労働者より平均賃金が高いので、逸失利益の金額も女児より男児の方が高額になりやすい傾向にあります」

 憲法では性別による差別が禁じられているにもかかわらず、“命の値段”については男女差があるのが現実なのだ。東日本大震災で逃げ遅れて犠牲になった宮城県・大川小学校の児童の賠償金を巡る裁判では、性差によって賠償金に差が出ることへの是非が問われ、注目された。将来、就労が予想される職業の内容によっても「不平等」が生じる。

「通常、大学生はその後の職業を考慮せず、大卒の平均賃金から逸失利益を算出しますが、医学生の場合、大卒の平均賃金より高額な医師の平均賃金をベースにすることがあります。ただし、“医学部を志望する中学生”などは医師になる確率が高いとはいえず、逸失利益の算定に医師の平均賃金を用いることは難しくなります。また、大手企業に内定した大学生の逸失利益が、中小企業に内定した大学生よりも高額に算出されるケースもあります」

 主婦が亡くなった場合は、実際の収入がなくても家事労働が金銭的に評価されて、逸失利益が認められる。

「主婦、主夫ともに家事労働の金銭的評価は、女性労働者の全年齢の平均賃金と同等とみなされるのが基本です。60才以上は若年者より家事労働の負担率が減るとみなされ、女性労働者の全年齢の平均賃金ではなく、一般的に女性労働者の60~64才など年齢に応じた平均賃金が採用されます」

 ただし、将来得られるはずの収入が逸失利益としてすべて認められるわけではなく、「将来の支出」が差し引かれる。

「逸失利益の40~50%ほどを生活費として差し引くケースが多いです」

 後編記事《人が亡くなったときの賠償金が映し出す「命の値段」の日米格差 労災や医療ミスで死亡時の賠償額の違い、「日本は命の値段が安い」との批判も》では、事例ごとに“命の値段”はどう変わるのか。また、日本人の値段は世界と比べて「安い」のか「高い」のか見ていこう。

【プロフィール】
古藤由佳(ことう・ゆか)/弁護士。弁護士法人・響。「難しい法律の世界をやさしく、わかりやすく」をモットーに、消費者トラブルや交通事故・労働問題・相続・借金・離婚など、民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などテレビ・新聞・雑誌等メディア出演も多数。
弁護士法人・響 公式HP:https://hibiki-law.or.jp/
『こんな法律知っ手相』HP:https://hibiki-law.or.jp/radio/

※女性セブン2025年6月26日号

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