億り人も実践する「TOB狙い」の投資法とは
世界中を振り回すトランプ大統領の言動は「G7サミット(先進国首脳会議)」でも相変わらずだ。不確実性が高まる状況に株式市場でも不安定な値動きが続くが、「先行き不透明な世界情勢を見極めようとするよりも確実性の高い投資法がある」とするのが、資産1億9000万円超を築いた「億り人」で兼業投資家のなのなのさんだ。割安な「高配当株」をメインに16年連続黒字となっている“億リーマン”が語る。
「私が注目しているのが、親子上場解消などに伴うTOB(株式公開買付)狙いの投資法です。親会社と子会社がともに上場する『親子上場』は米国などと比べても日本だけが突出して多く、海外の投資ファンドをはじめアクティビスト(物言う株主)からたびたび批判され、東京証券取引所も今年2月に『親子上場等に関する投資者の目線』というレポートを公表するなど親子上場の解消を促す動きが高まっています。
親子上場解消には、親会社が子会社の株を買い取って完全子会社化するか、別の会社などに子会社の株を買い取ってもらう手法がありますが、その際にTOBが用いられることが多い。TOBをかける場合、その時の株価よりも高値となる『プレミアム』を上乗せした買い付け価格が提示されることが多い。2023年度で平均39%くらいのプレミアムが上乗せされました。つまり、1000円の株であれば1400円で買い取ってもらえるというような話。その対象となる子会社の株をTOBの前に買っておけば、差額で大きな利益が期待できる投資法です」(以下、「」内コメントはなのなのさん)
「高配当」「割安」に「TOB狙い」を付け加える
実際、5月にはNTTや三菱商事がそれぞれ上場子会社をTOBによって完全子会社すると発表し、対象となったNTTデータグループと三菱食品の株価は発表後にいずれも1000円近い上昇を見せた。
もともとの株価があまりに割高な場合、それよりも低い買い付け価格が提示されて損になるリスクもあるというが、それでも、なのなのさん自身は、「2019年以降で18銘柄のTOBで利益が出た」と話す。前述の三菱食品のケースでも、TOBが発表される1か月前に購入していたことで、購入時の株価の1.4倍で売却できたという。
「ほかにも親子上場解消ではないですが、不動産投資会社のレーサム株のTOBで株価倍増となったこともあります」
もっとも、「TOBは狙ってもなかなか取れるものではない」とも指摘する。
「私の場合、『TOB狙い』はあくまでプラスアルファ。もともとの投資スタイルである『高配当』かつ『割安』な銘柄をベースに、『TOBも狙える』という条件を重ねて選ぶようにしています。配当収入が得られて株価上昇も望める銘柄であれば、TOBが実現しなくても十分にメリットがある。さらにTOBが実現すれば、より大きな株価上昇が望める、というわけです」