ヒョンデとしては5番目のモデルとして導入された「インスター」。日本での使いやすさも考えたコンパクトカーとして注目度は高い
韓国メーカー、ヒョンデのスモールEV「インスター」が登場し、話題になっている。日本の交通事情に合った5ナンバー枠にしっかりと収まるコンパクトボディに、49kWh（ラウンジ）のバッテリー搭載で、その航続距離は458km（WLTCモード）。実質的な航続距離がカタログ値の70％としても320kmほどは走れる。東京からなら静岡市や浜松市が範囲内だし、カタログの数字上では愛知県に入って岡崎市までは走れることになる。おまけに愛くるしい表情のデザインもコンパクトカーにはふさわしい仕上がりだと注目されている。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は自動車ライター、佐藤篤司氏が「インスター」に試乗して、その魅力を探った。
補助金を使えば200万円台でBEVが手に入る
これまで「日本車」と中国車や韓国車などの「アジアンカー」とは違うもの、と考えてきた。英国BBCの有名車番組でも、そうした位置づけをしていたことがあったし、白状すれば、そこには多少の自負心と優越があったことは事実です。ところが昨今、スマホや家電の影響もあってか、中国製品や韓国製品などへのアレルギーもだいぶ薄れてきたはずです。当然のように最近“躍進”をみせている中国のBYDや、日本市場に2022年に再上陸を果たした韓国のヒョンデへの評価も相当に上がって来ています。
そんな状況で最近、日本の道路事情にピッタリと言うことで注目されているのがBEV（バッテリーEV）の「インスター」。全長3,830mm、全幅1,610mm、つまり日本の5ナンバー枠に入るコンパクトカーであり、このサイズ感だけでも、日本での使いやすさが予見できます。おまけに車両価格はベースグレードのCasualが284万9000円、Voyageは335万5000円、ハイエンドのLoungeが357万5000円となっています。輸入車というか、国産も含めBEVとしてはお手頃感があります。
さらにインスターにはクリーンエネルギー自動車導入補助金、56万2000円をはじめとした優遇税制があり、トータルで約60万3000円が優遇され、さらに東京都の場合ですが国の補助金と合わせて25万円の補助金が交付されます。つまり実質的には全モデルが200万円台ということになります。これまでBEV導入の足かせのようになっていた「BEVは高い」という概念は、ここでかなり希薄になります。
もちろん価格だけの問題ではなく「車としてはどうなの？」という部分が購入動機の重要な要素になってきます。
まずは実車のサイズ感ですが、目の前に現れたインスターは、まさに「日本の道のためにある」と言った印象です。実はインスター、韓国では「軽車」と呼ばれるジャンルに入る車がベースです。BEV化に伴い、若干のサイズアップは行われましたが、日本国内の道路事情にピタリと合います。床下にバッテリーを引き詰めるBEVのため、少し全高は高くなってしまいますが、一方で長さや幅を効率的に切り詰めたお陰もあり、コマーシャル写真以上に実物はコンパクトに見えます。
そんな手頃なボディのデザインは「可愛らしさが」が伝わってきます。というか、もはや言い掛かりになってしまうかもしれませんが、少々可愛らしさやポップ感を強調した“あざとさ”を感じてしまったのです。例えばこのデザインをMINIやフィアット500と同列に考え、「大人が乗れるか」と考えた場合、「ちょっときついかなぁ」と。
実は車のデザインは「カッコ良さ」以上に難しいのが「可愛らしさの表現」だと思います。どちらも、あざとさが見えた途端に、気持ちが少し萎えてしまうのが正直なところ。もちろんそれは国産車、とくに軽自動車にも言えることではあるのですが……。
