充電能力も高く、使いやすさのレベルはかなり高い
乗車定員4名の車内に乗り込むと色使いは爽やかにしてクリーン。そんな外観の印象を抱えながらドライバーズシートに腰を下ろします。気になってしまったのは外観同様、細部に散りばめられている“ポップで可愛い”が目に付いてしまうところ。欧州車などが時折見せる、外観と車内のデザイン的連続性を、絶妙なる上手さで見せる“技”とは異質の印象。インテリアは決して居心地は悪くはないのですが、どこかソワソワとした気持ちが払拭できずにいました。
その一方で多彩なシートアレンジが可能と言う点には感心します。リアシートが左右分割式で、それぞれのシートバックを前方に倒せるところまでは「まぁ、当然か」という気持ちでしたが、助手席や運転席のシートバックまで前倒し可能と言うことには少々驚きました。これによって前後のシートのシートバックをすべて前倒しすると、大人2人分のフラットな“車中泊スペース”が出現するのです。アレンジにかけては日本の軽自動車並か、それ以上かもしれませんが自由度のあるアレンジが可能で、アウトドア派にとってはちょっぴり魅力的な機能と言えます。
そんな“心遣い”に感心しながらアクセルを踏み込むと低速からトルクフルなモーターらしく、力強く加速します。おまけにサスペンションの味つけがいいのか、加速時にお尻が下がるような感覚も少なく、フラット感が持続します。「日本の道路事情にも合わせたチューニングした」という、その乗り心地のフィーリングは低速域でこそ、多少ゴツゴツしたところはあるのですが、ずいぶんとマイルドです。交差点やコーナーへ入れば、低重心と言うこともありコンパクトカーながらも安定と安心感があります。さらに市街地から郊外、そして高速などへと進んでいくと、まさにBEVの特権ともいえる走りのスムーズで滑らか、トルク感のある走りを存分に味わえます。
この安定した姿勢と滑らかさ、静粛性があると、乗り心地自体はひとクラス上の印象を受けます。やはりシャシ性能もいいからでしょう。コンパクトサイズにありがちのピッチング(前後の揺れ)もよく制御されていて走りは安定。同時にハンドリングも軽快な上に安心安全を十分に感じられるレベルです。が確保され、不安や不満を感じることはありません。コーナリングに関しても意外なほどの安定感を誇ります。
この走りで総電力量49.0kWh(Casualは42.0kWh)のバッテリーを搭載し、一充電走行距離が458km(WLTCモード)。本来、ライバルになるはずだったホンダの「e(昨年販売終了)」は259km(WLTCモード)ですから、充電ストレスをかなり低減してくれるわけです。おまけにインスターは150kWの急速充電器にも対応していて、1回30分で10%から80%までの充電が可能とのこと。これはコンパクトなBEVにとって実に重要な問題です。1回の充電で400kmほど走れるというのはなんとも心強い。グローバルでは日産のリーフがデビューし、その航続距離は600km以上とも。やはり充電回数は少ないほどドライブの計画も立てやすいのです。
そして残る問題はディーラー網が十分に整備されていない点。オンライン販売がメインであり、メンテナンスはオートバックスや協力店などが拠点となります。ファミリーマートと協業し、ヒョンデ初となるコンビニエンスストアでの試乗会を開催するなど、しばらくは話題に事欠かなそうですが、サービス拠点の整備もどんどん進めてほしいものです。
まとまり感のあるフォルムでパッケージングも悪くない。一方、前後のデザインはアイオニック5のドットパターンのリアコンビランプのように、スッキリとしたデザインの方が、むしろ“可愛らしさ”が表現できたかもしれない