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河合雅司「人口減少ニッポンの活路」
石破政権「地方創生2.0」の課題

【地方創生2.0】人口減少に伴う地方消滅を避けるための「集約政策」がなぜ打ち出されないのか? 政治的タブーと有識者会議の限界

有識者会議の委員や官僚らにも理解者はいるが…

 有識者会議で複数の委員が強く求めたこともあり、基本構想は集約政策についても言及はしている。官僚たちと個別に話をすると、多くの人は「集約と投資の政策」の必要性について理解していた。それでも、集約政策を前面に押し出せないでいるのは、その推進には相当な政治エネルギーを要するからだ。

 人口集約を図ろうとすれば、引っ越しを迫られる人も出てくるし、役所機能の統廃合も進めなければならない。既得権を持つ人はもとより、変化を望まない高齢者などからの反発も予想される。

 このため、多くの国会議員は及び腰の姿勢だ。正論を述べて「悪役」にされるよりも、短期的な成果ならば期待できる東京圏から地方への人の流れの強化策でお茶を濁しておいたほうが得策であるとの判断なのだろう。

 集約政策が政治的タブーになってしまっている以上、官僚にしてみれば“物言えば唇寒し”だ。「地方創生2.0」の看板政策として打ち出されなかったのは残念であったが、有識者会議の限界もここにあった。

 相変わらずの分散政策から脱することができなかった「地方創生2.0」は専門家などから批判を集めている。政府も国会も、いつまでも真の地方創生から逃げ続けるわけにはいかないだろう。このままでは、いよいよ日本は人口減少とともに沈むこととなる。

 こうした状況下でも、心ある国会議員や官僚にはできることはある。「地方創生2.0」とは別に「地方創生3.0」の検討をスタートさせることだ。もちろん「3.0」のメインテーマは「集約と投資の政策」となる。集約政策は時間を掛けざるを得ないため、「2.0」の政策が完結する10年後を待って「3.0」の検討を始めるのでは間に合わない。

 一方で、危機感を強く抱く国会議員が増えることを願いたい。この政治的タブーを打ち破ることができるのは国会議員しかいないからだ。日本にはあまりにも時間がなさすぎる。

■第1回記事:《石破政権の看板政策「地方創生2.0」で重視する「東京一極集中の是正」の落とし穴 そう遠くない将来に顕在化するであろう“分散政策の限界”》から読む

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。話題の新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。

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