*16:07JST 四電工 Research Memo(7):ROE向上に向けた取り組みを推進
■株主還元策
1. 株主還元策
四電工<1939>は2023年8月に「資本収益性の向上に向けた取り組みについて」を公表し、基本方針を「人材投資をはじめとする成長投資を実践することで、利益の持続的な伸長を図るとともに、株主還元の充実等により適正な資本構成を実現する。」として、ROEの向上にフォーカスした取り組みを推進している。
株主還元については「中期経営指針2025」の下、2023年8月に株主還元方針を変更し、連結配当性向の目安を従来の30%以上から40%以上に引き上げた。また、景気動向等によって一時的に減益となった場合でも、極力配当水準の維持に努めるとしている。さらに、株式流動性を極力低下させないことを念頭とする自己株式取得、株式分割を通じた投資単位の引き下げについても検討する方針を打ち出した。そして2024年10月1日を効力発生日として株式3分割を実施した。
この方針及び業績の伸長に伴い、2025年3月期の配当は第2四半期末90.00円、期末35.00円とした。株式3分割後に換算すると、2024年3月期の46.67円(中間期末20.00円、期末26.67円)に対して、2025年3月期は65.00円(中間期末30.00円、期末35.00円)で18.33円増配となる。配当性向は59.4%である。また2026年3月期の配当予想は65.00円(中間期末32.00円、期末33.00円)とした。2025年3月期の株式3分割換算後の65.00円と同額で、予想配当性向は61.5%となる。2026年3月期は減益予想となっているが、年間配当額は据え置いている。将来的には、業績の拡大に伴ってさらなる株主還元の充実が期待される。
「四電工グループサステナビリティ方針」を制定してサステナビリティ経営を推進
2. サステナビリティ経営
同社はサステナビリティ経営の推進にも取り組んでいる。2021年12月に「四電工グループサステナビリティ方針」を策定し、2023年1月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同するとともに、TCFDコンソーシアムに加入した。2023年12月には「四電工グループ人権方針」を策定した。事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権尊重に取り組み、社会の持続的発展に貢献する。
直近では2024年10月には高知県が発行するグリーンボンド(高知県令和6年度第1回公募公債)に投資した。同年12月には同社グループ初のオフサイトPPA事業となる二ツ池下池太陽光発電所(香川県三木町)が電力供給を開始した。2025年3月には香川県「日本学生支援機構第一種奨学金返還支援制度」など、四国各県の基金へ合計4百万円の資金拠出を行った。四国各県が行っている若者の就学支援及び県内就職の促進・雇用創出を目的とする制度の趣旨に賛同し、2021年度から継続的に資金拠出を行っており、今回が4回目となる。また前年に続き「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を受けた。
次の成長ステージに向けた戦略に注目
3. アナリストの視点
同社は電気設備工事から空調・給排水設備工事までワンストップで提供できる技術力や高品質の施工力を強みとしており、一般工事の受注拡大に向けた運転資金を安定収入源である送配電設備工事から得られるキャッシュ・フローによって安定的に確保できる強みも備えている。「中期経営指針2025」で掲げた最終年度2026年3月期業績目標値を2025年3月期に1期前倒しで達成したことは、これまで同社が継続的に推進してきた一般工事受注拡大や工事採算性向上への取り組みの成果である。また配当性向目安の引き上げなど株主還元を強化する姿勢を強く打ち出している点も弊社では高く評価している。引き続き人材採用・育成やM&A活用による施工力強化、首都圏・関西圏など四国域外への展開加速、資本収益性の一段の向上などが課題となるが、次期中期経営計画においてはこれらの課題に対する積極的な取り組みが打ち出されることが期待される。2026年3月期は大型案件の反動で業績がやや踊り場局面となる可能性もあるが、次の成長ステージに向けた戦略に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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