本当に無料で修理してもらえるのか?(イラスト/大野文彰)
近年、高齢者が住む家を訪問し、修理を持ちかけて詐欺を働く悪質な訪問販売業者のニュースがたびたび報じられている。信用できる業者か見極める方法はあるのか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
実家には高齢の母がひとりで住んでいます。先日、訪問販売業者が来て、「雨樋が壊れているようだが、加入している火災保険を使えば無料で直せるから工事を任せてほしい」と言われたそうです。火災保険には加入していますが、本当に保険で雨樋の修理が無料でできるのでしょうか。高齢者を狙った詐欺ではないか心配です。(神奈川県・60才・主婦)
【回答】
火災保険契約には多様な特約がありますが、「災害によって生じたとはいえない屋根の修繕工事費用が保険でカバーされる特約」は聞いたことがありません。
火災保険はもともと、火災など不慮の災害によって生じた建物や家財の損傷を補償する制度です。洪水、落雷、台風などの自然災害や交通事故のような予期しない人災によって建物や家具などが壊れた場合に保険金が支払われるのが普通です。
屋根に修繕が必要な箇所があったとしても、保険金が支払われるためには、修繕を要する破損発生の経緯として、台風で屋根がめくれる、雹で穴が開く、あるいは、隣のマンションからの落下物で壊れた、などのように災害が原因で破損したことが必要だと思います。