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投資

日清食品HDのような“値上げ巧者”の銘柄とのんびり付き合う 元証券アナリスト・さかえだいくこさんが「消費者にありがたくない値上げが投資家には歓迎すべきこと」と説く理由

値上げの上手い企業は、時間がかかっても株価は上がっていくと考えられるという(イメージ)

値上げの上手い企業は、時間がかかっても株価は上がっていくと考えられるという(イメージ)

 49歳でFIREを達成することができたのは、「若い時から『お金の知識(マネーリテラシー)』を意識的に身につけてきたおかげ」とする元証券アナリストのさかえだいくこさん。そんなさかえださんは、「値上げが上手な企業」に投資することが成功の秘訣と考える。

 増収増益の企業に投資することが成功の早道だが、売上を落とすことなく製品を値上げして利益を増やすことは簡単なことではない。「値上げの効果が業績に反映されるまで時間がかかる」というさかえださん。

“値上げ巧者”の実例、そしてその見分け方とは。さかえださんの新刊『2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資』(すばる舎)より、一部抜粋・再構成して紹介する。

お金は儲かる場所が好き

 お金に人格はないのであくまでも比喩ですが、お金は儲かる場所が好きだと私は考えています。儲かる場所に自分のお金を置いた人が、プラスのリターンを得られます。それならば、私たちが考えるべきは、どこにお金を置いたら儲かるかです。株式投資では、利益が増える企業の株式を買うことでリターンを得られます。利益が増える企業は、まさに「儲かりそうな場所」です。どの会社の利益が増えそうかがわかれば、株式投資では苦労しません。「それがわからないから、苦労するんだよ!」という声が聞こえそうです。ヒントは身近なところにあります。例を挙げましょう。

「○○、来月から値上げ!」といったニュースを頻繁に耳にするようになりました。それが食料品や日用雑貨といった身近な消費財であれば、消費者にとってはありがたくないニュースです。しかし、その商品をつくって売る立場にある会社であれば、値上げはプラス材料です。その商品がコンスタントに売れれば、そのメーカーの利益は増えると考えられるからです。そして、値上げが上手な企業に投資することは、プラスのリターンを獲得できることが多い成功パターンです。

のんびり投資でダブルバガーを達成

ブランド力の高い製品を持つ日清食品HDは、2022年後半から一気に株価が上昇した

ブランド力の高い製品を持つ日清食品HDは、2022年後半から一気に株価が上昇した

 私が“値上げ巧者”だと考えている企業をひとつ挙げます。日清食品ホールディングス(東証プライム・2897)です。同社のウェブサイトで「価格改定」と入力して検索すると、実にたくさんの商品がヒットします。その「価格改定」は、ほぼ全部が“値上げ”です。2021年ぐらいから、さまざまな製品の価格を改定しています。近年、小麦や食用油など、食料品の原材料価格が上昇しており、食品メーカーは製品価格を引き上げないと利益を増やしづらい事業構造になっています。

 しかし、カップヌードルをはじめとしたブランド力が高い製品をいくつも有する同社は、価格改定を頻繁に実施しても売れ行きが落ちにくいのです。2021年初頭から、2023年末までの同社株価の推移が上の図です。値上げの効果が業績に反映されるには時間が必要なので、2022年半ばまでは株価が冴えない展開でしたが、2022年後半から株価が一気に上昇し、2023年末には底値から+70%程度まで上昇しています。インデックスと比べるとその差がわかりやすいと思いますので、TOPIXの値動きも合わせて表示しておきます。

 消費者の立場では迷惑に思える値上げも、投資家の立場に立てば歓迎すべきことです。私は即席麺をめったに食べませんが、日清食品ホールディングスの株は数年来、保有しており、この値上げの恩恵を株主として享受し、一時は株価が2倍以上になりました(ダブルバガー達成)。

 このように銘柄とのんびり付き合うのが私の投資ポリシーです。ちなみに、こんなに優秀な株価推移をした著名な企業であっても、同社は日経平均株価には採用されていません。これも、日経平均株価に私が残念さを感じる要因のひとつです。日清食品ホールディングスの株は、2024年以降、株価が軟調に推移しています。しかし私は売らずに、むしろ少しずつ買い増しています。いずれまた、“値上げ巧者”ぶりを発揮する日がくるだろうと考えているからです。ユーザーのお金が向かうところは、投資家のお金が向かうところでもあります。シンプルな理屈です。

次のページ:値上がりまでの「ストーリー」を描ける企業に投資する
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