チベット自治区ヤルンツァンポ川下流・水力発電プロジェクトがスタートする(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。不動産バブルの収縮に伴い、深刻なデフレに見舞われている中国経済への当局の対策と株価への影響についてレポートする。
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中国国家統計局は8月9日、7月の物価統計を発表、消費者物価指数(CPI)は前年同月比で変わらずであった。中国政府がゼロコロナ政策を完全に放棄したのは2023年1月だが、同年7月には早くもマイナスを記録、その後は春節時期のずれの影響を受ける1、2月を除けば、ほぼ0%付近を行ったり来たりしている。生産者物価指数(PPI)に至っては3.6%下落と34か月連続の下落だ。
2年もの間、デフレといって良いような状態が続いているが、その最大の要因は不動産バブルの収縮だ。不動産開発投資、不動産販売(面積)ともに2021年下期あたりから月次ベースでマイナス基調となり、前者について今年6月(累計)は11.2%減、後者は3.5%減と依然として大幅なマイナスで、不動産在庫については6月末現在、4.1%増と、拡大が続いている。
この間、対策が打ち出されてこなかったわけではない。2023年以降、家電、自動車分野を中心に「以旧换新(買い替え支援)」政策が断続的に実施され、それに生産設備の買い替え支援も加わった。消費券配布、観光・サービス業支援、特別国債発行、ハイテク製造業への補助金拡充といった積極財政政策や、政策金利、預金準備率の段階的な引き下げといった金融緩和政策も実施された。
しかし、不動産不況に端を発した需要不足は顕著で、依然として回復の兆しはみられない。更なる強力な支援策が求められるところだ。