桐谷広人さんは優待株をいつ仕込んでいるのか
2025年8月には日経平均株価が史上最高値を更新するなど日本の株式市場に弾みが出てきたが、高値掴みを警戒し、株価が下がったところで個別株を買う「押し目買い」のチャンスを待つ投資家も少なくない。「株主優待の桐谷さん」として知られる投資家でプロ棋士の桐谷広人氏は「株は安い時に買うのがいい」と話し、独自の買い方を確立している。波瀾万丈の投資遍歴を持つ「株主優待の達人」ならではの優待株の仕込み方を教えてもらった。
どん底から救ってくれた優待株
バブル景気前夜の1984年に株式投資を始め、バブル崩壊、ITバブル崩壊を経験しながらも、2005年12月には約3億円の資産を築いていた桐谷氏。ところが、2006年以降、ライブドア・ショック、サブプライム・ショック、リーマン・ショックと相場にボコボコにされてしまい、資産は5000万円弱まで激減。リーマン・ショックに襲われた時は、信用取引で追証(追加保証金)や、証券会社に支払う年間400万~500万円の金利などの資金繰りに苦労し、一時、破産寸前まで追い込まれ、地獄を見たという。
どん底のなか、株式優待のない値がさ株を中心に保有株を売却し、株主優待のある銘柄は株価が下がっても残しておいたところ、優待品が次々と届いたことがその後の投資スタンスにつながった。優待の食品などで毎日をしのいでいるうちに、2012年12月に安倍政権が誕生。アベノミクスの追い風で地獄の日々から抜け出し、現在、株式投資で築いた資産だけで約6億円に上る。
桐谷氏が自身の経験から実感した株主優待投資の魅力を説明する。
「買った時から株価が下がった株はいっぱいありますが、だいたいが優待株なので株価が下がっても優待や配当がくるのでホッとするところがあります。バブルの時期に1株260万円で買った株がその後25万円ぐらいまで下がってもずっと持っていたら、今から10数年前に株主優待が新設され、1000株保有でカラフルなカタログが届くようになりました。それを見ながら缶ビールなど好きな優待品を選ぶのですが、株価が下がって嫌だな~、気分が悪いな~と思っていても、優待が届くとほっこりするんですよね。精神衛生上いい意味もあります」(桐谷氏。以下、「」内、同じ)
長年、相場の荒波にもまれてきた末にたどり着いた悟りの境地をこう語る。
「優待があって、配当もそこそこある銘柄を選んで保有していると精神的に安定しやすいというよさがあります。毎日の株価の上げ下げに一喜一憂して、憂鬱になったり、あるいは大はしゃぎしたりするのではなく、長い目で見て、安い時に買って長く持つ優待株の分散投資が一番いいと思っています」