なぜ利下げが強く意識されているのか?
高確率で9月利下げが意識されている背景には、複数の要因が重なっています。
【1】経済指標の鈍化
雇用統計や製造業指数などに減速傾向が見られ、景気の過熱感が後退しています。その傾向が最も大きかったのは8月1日に発表された雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を下回るだけでなく、過去2ヶ月分が大きく下方修正されました。
【2】市場の期待感
トランプ大統領によるFRBへの利下げ圧力が続き、FRBの人事についてもよりハト派(金融緩和を支持する)の人物が次期議長になるのではないか?と予想されています。
こうした要因が合わさり、市場では「9月利下げはほぼ確実」という見方が広がっていて、さらに株価には年内3回の利下げが徐々に織り込まれている部分もあるのではないでしょうか。
投資家が注目すべきポイント
株式市場への影響
一般的に利下げは株式市場にプラス材料となります。借入コストの低下が企業収益を押し上げ、景気を支える効果が株価上昇につながりやすいためです。ただし「景気悪化が利下げの理由」である場合には、株高が続かないケースもあります。
物価動向への影響
現状、まだFRBが目標とするインフレ率(2%)を超える比較的高インフレ状態が続いています。利下げにより景気が加熱されると、インフレが助長される可能性があります。FRBの使命の一つは「物価の安定」ですが、利下げにより物価が急上昇した場合、利下げを継続することは難しく、株式市場の織り込みに大きな変化が訪れるかもしれません。
為替市場への影響
米国の利下げは、日米金利差の縮小に繋がります。また日銀は利上げ政策を指向しているので、さらにドル安・円高圧力を生みやすく、日本株投資家にとっても無視できない要素です。為替の動きが輸出関連企業の業績に直結するため、金利動向とともに為替の動きには注意が必要です。
長期的な視点の重要性
短期的には「利下げするかどうか」が焦点ですが、本質的に重要なのは利下げ後にも景気や株価が安定しているかです。FRBのデュアルマンデート(2つの使命)は、「物価の安定」と「雇用の最大化」です。現在では、下振れた雇用を守るために利下げが想定されていますが、前述したように利下げにより物価上昇が急加速した場合は、それらのシナリオが崩れてしまいます。