日本の自販機市場は縮小が続いている(写真:時事通信フォト)
8月に発表されたコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(コカ・コーラBJH)の2025年12月期の中間決算が注目を集めている。会社予想の通期業績が、従来の110億円の黒字から485億円の赤字へと下方修正されたのだ。一方で、株価を見ると、決算発表後も年初来高値水準で推移している。はたしてこの決算をどう評価すればよいのか。イトモス研究所所長・小倉健一氏が、同社の事業構造を踏まえて、今回の決算を解き明かす。
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コカ・コーラBJHが2025年12月期に485億円の最終赤字を見込むと発表した。前期の73億円黒字から一転、従来予想していた110億円の黒字を大きく外した。
同社は国内最大の自販機網を誇り、全国に約65万台を展開する。業界2位のサントリー食品インターナショナルの約35万台を大きく上回る規模は圧倒的であり、かつては定価販売が可能な高収益モデルとされた。2024年の年間販売数量4億9600万ケースのうち、自販機経由が2割を超えていた事実がその存在感を物語る。ただ過去10年間で自販機の販売数量は24%減少し、稼働台数も17%減少した。小売店での値引き販売やプライベートブランド商品の拡大に需要が流れ、固定費の重い自販機は赤字要因となった。原材料価格の高騰や物流費、人件費の上昇も収益構造を圧迫している。
日本全体の自販機市場も縮小が続き、2000年代にピークを迎えて以降、設置台数と売上高は減少傾向が定着している。2024年末の稼働台数は391万台で前年比0.5%減となり、400万台を下回った。2025年も撤去が相次ぎ、収益悪化が業界全体の課題となっている。コンビニエンスストアの拡大などで低価格の飲料がいつでも購入可能になり、自販機利用は減少した。コロナ禍以降の在宅勤務普及もオフィスや駅構内の利用を押し下げ、少子高齢化や若年層の嗜好変化も需要縮小に拍車をかけた。健康志向の強まりで甘味飲料が敬遠され、従来型炭酸飲料の販売も苦戦している。
運用コストの増大も深刻である。商品補充やメンテナンスを担う人材が不足し、燃料費や人件費上昇がボトルカー運用を圧迫した。電力料金や原材料費の高騰も利益率を低下させ、値上げに踏み切ったメーカーは消費者離れの懸念を抱えている。キャッシュレス決済の普及に対応できない老朽化機も多く、更新費用が重荷となり、維持が困難な機の撤去が加速している。省エネ規制強化や温暖化対策の要請で稼働制約も広がり、都市部での設置場所確保は一段と難しくなった。AIやIoTを活用した在庫予測や遠隔管理の試みはあるが、その普及は遅れ、食品自販機など新領域の拡大も全体の1割未満にとどまっている。