「空売り」向きの銘柄とは(「俺がカブ番長!」第8回より。イラスト/スズキサトル)
株価には上げ下げがつきもの。上昇相場だけでなく、下落相場でも利益が出せるようになれば、より投資効率が高まるだろう。そのための手法のひとつが信用取引を使った「空売り(信用売り)」だ。「安く買って高く売る」のが株式投資の基本なら、「高いところで空売りして安いところで買い戻すことも理屈は変わらない」というのは、個人投資家向けレポートを提供するカブ知恵代表・藤井英敏氏だ。
2008~2009年にかけて雑誌『マネーポスト』誌上で連載された情報量満載の株コミック『俺がカブ番長!RETURNS』の監修を担当した藤井氏は、「『空売り』を極められれば、下げ相場にも負けない」という。
信用取引のひとつである「空売り」は自己資金や保有株を担保にして証券会社などから株を借りて売る。たとえば株価1000円で売って、900円で買い戻せば100円の儲けとなる。ただし、極端な話、株価の下落はゼロで止まるが、上昇は青天井。まして信用取引は自己資金の最大3.3倍まで取引できるので、空売りした株が思惑通り下がればいいが、上がり続ければ元手を大きく上回るほどの損失が膨らむ一方だ(実際には、損失額が拡大すると一定の水準で「追証(追加保証金)」が発生し、それを入金できないと取引終了となる)。
銘柄選びは小型株より大型株から
そんなリスクの高い投資手法で負けないためには、何を心がければよいのか。まずは「銘柄選び」から。
「まず空売りに向いている銘柄は、今後上がる可能性が低い、つまり下がりやすい材料を持っているものです。たとえば時価総額の小さい『小型株』は流通量が少ないため、ちょっとした買いが入ると、敏感に反応して値上がりしてしまうので、空売りには不向きといえます。いまなら『AI』をはじめ今後有望といわれるようなテーマを持つ『材料株』も、たとえいま下がっていたとしても、いずれくる上昇局面を考えると避けたいところです。
それよりも、多少の売買では株価が大きく動かない、時価総額の大きな『大型株』から考えたい。目安としては時価総額5000億円以上の大型株が向いていると思います」(藤井氏、以下同)
大型株のなかでも空売りに不向きなのは、「電力やガス、鉄道といったディフェンシブな内需銘柄は下がりにくいので、手を出さない方が賢明」だという。
「世界景気やトランプ関税など外的要因にどうしても左右されてしまう外需関連のなかから、業績があまりよくなく、株価的に割高と思える銘柄に目を向けるべきでしょう。『人の行く 裏に道あり 花の山』という相場格言があるように、たとえばアナリストなどプロの目があまり及んでいないような注目度の低い銘柄に目を凝らすのもいい」