それでは、これを何かの罪に問えるかというと難しいと思います。
まず、子供をスポイルする点ですが、いわゆる子供の虐待には該当しません。一般的に子供の保護を定めた『こども基本法』や『児童福祉法』がありますが、保護者ではない個々の国民が具体的に何をすべきかを定めた規定はなく、『児童福祉法』第2条により、全国民に児童が心身ともに健やかに育成されるよう努める義務を課している程度で、特に罰則もありません。
保護者との関係では、保護者からの子女に教育を受けさせる権利や利益の侵害として慰謝料請求は理屈の上ではあり得ると思いますが、認容されないでしょう。そこで問題なのは、先生との関係です。先生の授業という業務を、成績を誤魔化すことで邪魔したことになれば、偽計業務妨害が考えられます。それでも夏休みの宿題代行で、現実化するとは思えません。
相手は未成年者。小遣いからの支払いだと、宿題代行は小遣いの趣旨にそぐわないので、返金を要求される可能性があります。道義的にも止めたほうがよい副業です。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年10月31日号