世田谷区などの人気エリアでも「街間格差」が(写真:イメージマート)
東京都心部の地価上昇が続いている。9月に発表された基準地価では、商業地、住宅地ともに大きな伸びを見せた。しかし、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏(オラガ総研代表は、「今後も東京都全体が一本調子で右肩上がりとは考えにくい」と指摘する。
現下の好調が基盤の脆弱なインバウンド景気に支えられていることや、今後は東京都も人口減少の波に晒されることが背景にあるという。牧野氏は東京23区内であっても、街によって明暗が分かれていくと見ている。
「たとえば、住宅地として人気とされる世田谷区、中野区、杉並区、練馬区などのいわゆる“城西エリア”も、その事情はエリアごとに一様ではありません。中野区、杉並区、練馬区の3つの区を比較してみると、中野区が最もビビットに人が動いています。地価も非常に伸びている。一方、杉並区、練馬区というのは、地価の上昇が鈍く、上がっているものの中野区との差はかなり大きい。
というのも、杉並区、練馬区は昔ながらの住宅地で形成されており、高齢化が進んで相続が多発している。この3つの区で高齢者人口を調べると、中野区が一番若くて、杉並区の高齢化が激しい。杉並区や練馬区、そして世田谷区もそうですが、今後、大量の相続、それも残された配偶者が亡くなる二次相続が多発すると考えられます。そうしてこの3区で住宅供給量が増える一方、実需として家を買いたい30代、40代の人口がどんどん減っていくわけです。
外国人の需要で多少補われるとしても、こういった区で今後も大幅な地価上昇があるかというと、それぞれの区のなかで中心となる地域は別として、区全体が伸びるというのはなくなってくると考えられます」
