シニア世代女性は医療保険をどう活用すればよいか(写真:イメージマート)
人生の「備え」として加入する保険。しかし、必要な備えは年齢ごとに異なり、定期的な見直しが必要だ。特に、寿命が長く高齢になってから“おひとりさま”になる可能性も高い既婚女性にとっては、心配な部分も多いだろう。見直しが必要となるケースも多い60才以降、損をしないための保険を精査する方法とは。【老後の保険の見直し術・前後編の後編】
入院給付金より治療給付金
現役世代では、医療保険のメインはがんや生活習慣病が対象となったが、年を重ねると認知症や介護などにどう備えるかが現実的になる。結婚している女性の認知症や介護への備えについて、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが語る。
「認知症や介護は家族の負担が大きくなってしまうので、認知症保険や介護保険に入っておくことでいろいろなサービスを活用しやすくなるメリットはあります。特に認知症介護は、通常の介護より金額が大きいともいわれます。ただし、受取人には注意が必要です。特に認知症保険は、認知症を発症すると、自分で請求できない可能性があります。代わりに手続きをしてくれる指定代理請求人を設定しておくことが大切です。
子供に迷惑をかけたくない、老老介護に不安がある、おひとりさまになる可能性がある、などといった場合には、妻自身が加入しておくことも併せて考えてもいい」
ただし、保険料と保障内容は慎重な判断が必要だ。ファイナンシャルプランナーの荒俣佳世子さんが話す。
「現時点で加入している医療保険に必要な保障が特約としてついていれば保険料が高い認知症保険や介護保険に入るよりは、将来を楽しむための貯蓄や資産運用をおすすめしています」(荒俣さん・以下同)
すでに加入している医療保険があるのなら、内容を精査することが欠かせない。
「たとえばがん保険でも、かつては診断時に一時金、加えて入院給付金という形が主流でした。でも、いまは医療が発展して入院期間が短縮されていますし、医療保険に入院保障があれば不要です。近年ではがんは通院治療がメインになりつつありますから入院給付金よりも治療給付金が出る方がいいという判断もありますし、安価な保険料で備えられます。
また、保険会社によっては商品改訂時に、保険適用とならない自由診療を受けた際の高額な医療費を保障する特約を新たに追加していますので、この自由診療特約を付加することで、より現実的な備えになると思います」
社会保険労務士の井戸美枝さんも言い添える。
「物価高とインフレで、保障金額が現実と見合っていないケースも往々にしてあります。入院1日1万円といったって、いま差額ベッド代は2万~3万円くらいしますから、ほとんど足しになりません」
シニアになってからの新たな加入は保険料が高くなりがちだが、定期的に保障を見直すことで保険料が下がり、より現実的な保障を得られることもある。ファイナンシャルプランナーの荒俣佳世子さんが話す。
「短期の入院に備えた保障は必要ないというかたがいらっしゃいますが、長期化する病気の場合の保障は必要です。がん保険は定期的に見直した方がいいですね」
