公立病院の経営問題に詳しい城西大学経営学部の伊関友伸教授が言う。
「以前から老朽化が指摘され、耐震不足への対応のため建て替え計画が出るも、経営悪化や建設費高騰により断念していた施設でした。老朽化対策の遅れが地域医療を寸断させた象徴的事例です」
公立病院の赤字体質が招く恐れのある医療の質の低下は是が非でも食い止めるべきだが、伊関教授はこう指摘する。
「赤字を病院側の努力不足とするのは早計です。過疎地域や僻地、あるいは高度な救急医療や産科、小児科など、民間経営では採算が取れない医療現場を公立病院は抱えている。公立病院を『赤字のお荷物』と切り捨てれば、地域医療は崩壊してしまう。経営改善には、医療制度を熟知した効率的な運営、地域のニーズに合う(ダウンサイジングや統合を含む)機能分化を進める必要があります」
「医療の灯」を消さないためにも、地域ごとに課題を見極め、対策を急ぐ必要がある。
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※週刊ポスト2026年1月2・9日号