「長期金利2%台」が投資家心理に与える影響
今回の注目点の一つが、日本銀行の利上げを受けて、長期金利(10年国債利回り)が2%台に乗せてきたことです。日本株を長期視点で見る上では、この長期金利の水準が投資家心理に与える影響は無視できません。
日本10年国債利回り(長期金利)。日銀会合後に2%を超えて推移している(TradingViewより)
これまでの日本市場では、「金利が低いこと」が株式の相対的な魅力を高めてきました。しかし、長期金利が2%を安定的に超えてくるようであれば、債券と株式を比較する際の物差しが変わり、投資家の意識にも変化が生じやすくなります。
また、長期金利が2%を超えてくるということは、日本の主な上場企業の配当利回り(おおよそ2%前後)と、利回り水準が並ぶことを意味します。この利回りの差を示す考え方が、「イールドスプレッド」です。
変動リスクの大きい株式と、安全資産とされる国債の利回りが同水準になれば、相対的に安全性の高い債券の魅力が高まります。その結果として、将来的に「債券買い・株式売り」という資金の流れが意識されやすい局面に入りつつあると言えるでしょう。
もっとも、すぐに株式市場から資金が大きく流出するとは考えにくく、あくまで現段階では「意識の変化」が起こり得るフェーズです。企業業績が底堅い中で、金利上昇=即株安と短絡的に判断するのは避けたいところです。
年末年始の為替の変動リスクには要注意
為替市場では、日本が利上げを実施する一方で、米国が利下げに踏み切ったことにより、日米金利差は縮小しています。
通常、日米の金利差が縮小すると、円高・ドル安方向に動きやすいとされています。しかし足元では、その教科書的な動きとは異なり、円安が進行する局面が見られました。これは、単純な金利差だけでは説明できず、円キャリー取引の継続や、日本経済に対する見方など、複合的な要因が影響しているためです。こうした状況から、この円安は日銀の金融政策だけでは止めにくい、との受け止め方も広がり始めています。
その結果、一部の政府関係者からは円安を牽制する発言も見られるようになり、市場では為替介入への警戒感も高まりつつあります。
これから年末年始にかけては多くの市場参加者が休暇に入ります。そのため市場の流動性が低下し、2019年に起きたフラッシュクラッシュ(1月3日早朝、アップルの業績下方修正が引き金となり、ドル円が数分間で108円台から104円台へ急落した事例)のような、極端な値動きが発生しやすい時期でもあります。特にお正月期間は参加者が限られるため、為替の急変動リスクには十分な注意が必要でしょう。
2019年1月3日に起きたフラッシュクラッシュ。1日で4円以上の急変動が起きた(TradingViewより)

