社会的支援を受けにくい富裕層の加害者
銀行のシステムも変わり、あちこちで啓発が行われているにもかかわらず、特殊詐欺は減っていません。近年ではさらに悪質な高齢者宅を狙った強盗事件が多発しています。格差社会の進行によって、富裕層が狙われ、犯罪被害に遭うリスクは高くなるかもしれません。一方で、富裕層が加害者と関係がないかと言えば、決してそうではありません。
2022年、女優の三田佳子さんの次男の、覚醒剤取締法違反容疑での5度目の逮捕が報道されました。次男は未成年の頃から犯行を繰り返し、その度に三田さんは会見を開いて世間に謝罪してきました。
次男が未成年の頃、多額の小遣いを与えていた三田さん夫妻は、過保護だと激しくバッシングされました。次男の逮捕は成人してからも続き、その度に息子への過度な経済的援助が取り沙汰され批判されていました。
成人した子どもにまで援助を続けることは経済力のある家庭でなければできないことであり、格差が広がる日本社会において嫉妬も相まって親の責任が厳しく問われます。
しかし裕福な家庭ほど両親が忙しく、子どもに構う暇がない罪悪感から、小遣いを与えすぎてしまうパターンはよくあります。お金は悪い仲間を呼び寄せるのです。
前科者や出所者の社会復帰支援組織は十分とはいえないまでも、全国に存在し、求めさえすれば助けてくれる人々はいます。しかし、富裕層の加害者が、こうした社会的支援を利用するケースは非常に稀です。本気で更生を支援する人々は、加害者の我儘は受け入れません。それに比べて親は、我が子が罪を犯しても甘く、手厚い援助を惜しまないのです。子どもからしたら、あえて厳しい環境に行くよりも、温室にいた方がいいに決まっています。
「二度と子どもに罪を犯させまい」と、親が面倒を見すぎてしまう状況こそが、逆に子の犯罪を助長しているのです。ターニングポイントがあるとすれば、親の資金が底をついた時です。自分の力で生きていく他に選択肢がなくなり、そこで初めて自立更生の兆しが見え始めます。家族の縁を切るのは難しいかもしれませんが、金の切れ目が縁の切れ目になるのです。
*阿部恭子著『お金持ちはなぜ不幸になるのか』(幻冬舎新書)より一部抜粋して再構成。
(第2回に続く)
【プロフィール】
阿部恭子(あべ・きょうこ)/NPO法人World Open Heart理事長。東北大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。2008年、大学院在学中、日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。今まで支援してきた加害者家族は2000件以上に及ぶ。著書に『息子が人を殺しました』『家族という呪い』『家族間殺人』(いずれも幻冬舎)、『加害者家族を支援する』(岩波書店)、『高学歴難民』(講談社)、『近親性交』(小学館)など多数。