*10:04JST IACEトラベル Research Memo(4):BTMサービス拡大に特化したプロダクト・ポートフォリオ(2)
■事業概要
2. 経営戦略の評価
(1) 創発的戦略形成による独自のポジション
IACEトラベル<343A>の戦略は、明確な事前設計よりも、試行錯誤を重ねながら最適解を導いた「創発的戦略形成」の典型である。創業当初は格安航空券販売を主力とし、個人旅行を中心に事業を拡大したが、価格競争の激化に直面し、利益構造の脆弱さを痛感した経験が転機となった。そうしたなかで、競合が少なく、かつ高い専門性が求められるBTM市場に活路を見出した点に戦略的独自性がある。
BTM市場は従来、企業内に専属部署を持つ「インハウス系旅行会社」が支配しており、取引先がグループ内に固定されているため、競争や革新がほとんど生じない構造だった。取引慣行もアナログで、メール・電話中心の非効率な業務が常態化していた。同社はこうした閉鎖的市場に外部から参入し、「独立系BTM」という新たなカテゴリーを創出することで差別化に成功した。その存在は、BTM業界における「ゲームチェンジャー」としての意義を持ち、デジタル化・効率化を通じた市場改革をけん引する立場を確立している。
(2) 徹底的なコミットメント
同社の経営行動は、一貫してBTM事業の強化と市場拡張に帰結している点が際立っている。官庁・公務、海外、米軍、個人といった補完サービス群は、いずれもBTMサービスの信頼性・実績・ネットワークを補完する目的で展開されている。例えば、中央省庁との契約実績は新規法人顧客開拓時の信用補完として機能し、海外子会社は日系企業の海外拠点ネットワークを通じてグローバルBTM需要の獲得に貢献している。また、米軍基地内での運営実績は、厳格な契約・セキュリティ要求に対応できる企業としての信頼の証となり、法人営業面での説得力を高めている。さらに、2025年のIPOも単なる資金調達目的ではなく、「上場企業としての信頼力」そのものをBTM事業の成長資産として活用する意図が明確である。こうした経営資源の配分や意思決定の方向性はすべてBTM事業の拡大とブランド強化に向けられており、経営戦略の一貫性が高い。同社の徹底したコミットメントは、BTM領域における信頼性・専門性・柔軟性の3要素を兼ね備えた企業としての競争優位をさらに強化していくものと、弊社では評価している。
(3) 総括
同社の成長軌跡は、偶発的な成功ではなく、経験学習を通じて戦略的洞察を深化させた結果である。価格競争の淘汰圧を起点に閉鎖的BTM市場へと舵を切り、補完事業を通じてBTMの信頼と規模を積み上げてきた過程は、創発型企業がどのように独自市場を切り拓くかの好例である。同社の次なる挑戦は、上場による社会的信用を背景に、BTM市場のゲームチェンジャーとして業界構造の再定義をどこまで実現できるかにあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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