約束がなければ、不倫発覚後3年が経過しているので、不貞行為に基づく慰謝料請求権は時効になっていますが、2年前の離婚に伴う慰謝料請求権は請求できます。
慰謝料を請求しない約束をした場合では、元夫は再婚して合意に違反したので、合意を解除して慰謝料を請求できます。また解除しなくても、合意違反自体による新たな精神的苦痛も慰謝料の対象になりえます。
しかし、憲法24条は「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」すると定めており、元夫は憲法上の婚姻の自由を理由に合意の効力を争う可能性があります。しかし、これは戦前の家族制度の下、婚姻について個人の自由な意思が制約されていたことを踏まえて、婚姻当事者の自由な意思による合意によってのみ成立することを認めたのであり、個人が自由な意思で婚姻しないと約束することを禁じていません。合意に至った経過からも再婚禁止特約の効力を主張できるでしょう。
不倫相手の女性に対する慰謝料請求は、その女性との間でも合意した場合でなければ、元夫との合意でいったん慰謝料を請求しないと約束して与えた免責の利益を奪うことになるため請求はできません。
解除すると元夫は養育費を支払わなくなるかもしれませんが、父親として支払い義務があります。合意文書で養育費の額が決まっている場合は給料の差し押さえもできますが、解除で養育費支払いの約束がなくなれば、改めて家庭裁判所の調停が必要になる可能性があります。弁護士に相談し、慎重に準備することをおすすめします。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2026年2月12日号