家庭内別居中でも「不倫」で慰謝料を請求できる?(イラスト/大野文彰)
将来的に離婚することを想定して“家庭内別居”の状態を続けている夫婦も少なくないだろう。だからといって、離婚の話し合いが始まっていない状況で不倫に走ることは問題ないのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
結婚して13年ですが、4年ほど前から家庭内別居が続いています。会話もほとんどなく寝室も別々です。
先日、夫が不倫していることが発覚しました。夫は「家庭内別居状態だから不倫にはならない」と主張しますが、具体的に離婚の話し合いはしていませんでした。
いつ離婚してもいいという気持ちはありましたが、実際には同居していたわけですから、不倫は不倫です。夫と相手の女性に慰謝料を請求できますか。(東京都・47才女性・会社員)
【回答】
夫婦の間には「婚姻共同生活の平和の維持」という権利または法的保護に値する利益があり、不貞はこれを侵害する不法行為です。不貞配偶者(甲)は相手方配偶者(乙)の精神的苦痛を償うために慰謝料の支払い義務を負います。
甲の不貞相手(丙)の責任については、最近では不貞は夫婦の間の問題だから、第三者が夫婦関係を壊そうとする悪意があった場合は別として、不法行為にはならないとする説が有力になっています。
しかし、最高裁は一貫して、「丙は、不貞相手である甲の配偶者乙の権利を侵害する不法行為をしたものとして、乙に対して慰謝料を支払う義務がある」と解しています。甲が結婚していることを知っていたり、知らなかったことに過失があれば、甲を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず責任があるという原則を維持しています。