毎年11月初旬、盛大に開催される唐津くんち
地方都市では仕事の実績より地縁や地元愛が優先される
そんな中、地元出身の人々は、「唐津商業高校出身です」「おぉ!そうね!オレもそうや!」みたいな話で盛り上がる。これって都会の場合は、「コンビニチェーンのアノ企画を成功させました!」「アノエリアの開発を手掛けたのは私です!」みたいな話になりがちなんですね。都会は各地から人が集まってきているため、地縁が重視されにくく、「おぉっ!」と言われる評価を得るには、仕事上の実績をアピールしなくてはならない。
しかし、マイルドヤンキー界隈では出身高校や誰々と知り合いかといったことが、その人のアイデンティティを確固たるものにしてくれます。それは「実績」ではないものの、地方の人々にとっては、その経歴が極めて重要になっている証左でしょう。
私の友人の息子さんは現在高校3年生ですが、今や高校生は「金の卵」的扱いで、各企業から非常に重宝される人材です。その彼は、全国に拠点があるメーカーを含めいくつか内定を得たなかから、地元勤務を約束してくれた大手建設会社への入社を決意。地元の祭りである「唐津くんち」に参加したいと正直に伝え、その望みを叶えてもらえたのです。
こうした地元愛の強い若者が地域を支えているわけです。これを「地元に捉われたマイルドヤンキーw」などと見下す向きはあるものの、正直私のような非マイルドヤンキーは、このような人生が羨ましくて仕方がない。だって、都会で失敗した場合、地元に戻ってくれば親戚と仲間が自分を助けてくれるんですよ! こんないい人生はないのではないでしょうか。
不動産業者も「20代夫婦が家を買える」をアピール
地方都市の新聞に入っている折り込みチラシを見ると、「20代夫婦が家を建てた我が不動産屋で購入を!」みたいな文言が目につきます。なんと、780万円で家が買える。地元の不動産会社による広告ですが、明らかに20~30代の若い夫婦を狙った営業をしています。土地は200平方メートル、建物は120平方メートルほどある。私なんか「こんな家をこの価格で買えるのか!」と仰天するわけですが、不動産業者は「都会と違って、地元なら20代夫婦が家を買える!」をアピールしているわけですね。
そうして買った家に、ピザ窯やら薪ストーブを導入して自分好みにアレンジするわけで、案外、地方のマイルドヤンキーとされる方々は幸せな人生を送っているのでは、と日々感じるようになりました。だからこそ、都会の高学歴で高年収を謳っている方々も、安易にマイルドヤンキーを蔑むのはやめたほうがいい。貴殿らはいつ没落するかは分からないが、マイルドヤンキーはかなりしぶとく生きる基盤を持っているわけですから。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は稲熊均氏との共著『ウソは真実の6倍の速さで拡散する』(中日新聞社)。
