コンテストで入賞しなくても合格は可能
東大の学校推薦型選抜の場合、「評定平均値」「共通テストのスコア」「探究学習や数学オリンピックなどの実績」の3つが合否を決める要素になるといえよう。
SNS等で拡散されている誤解として、「東大の推薦の合格者のすべてが探究学習や数学オリンピックなどで実績がある学生」というものがある。実際にはオーソドックスな探究学習の成果があり、特にコンテストで入賞していなくても合格している例は多々ある。
では、なぜ「数オリや探究コンテストで著しい成果がある学生が東大推薦に受かる」というように語られているのか。
その理由は、合格者自身がその実績をアピールして話しているからではないか。合格者は、数学オリンピックや物理オリンピック、探究コンクールでの実績を合格体験記などで語っている。「高校時代の研究がうまくいったから東大の推薦に出願した」と語る合格者もいるが、「評定平均値がいくつだった」といった肝心なデータはほとんど載らない。
そして合格者の多くは最難関といっていい高校の生徒たちだ。彼ら/彼女らの多くは評定平均値が5に近いはずだ。ある高校ではチームで探究学習を仕上げてレポートを作成した。オーソドックスで良質なレポートだ。そのチーム内で一番評定平均値が高い、つまり5に近い生徒が代表として東大の推薦を受験して合格した。これがリアルな合格体験記なのである。その探究学習でリーダー的な立場にいたとしても、評定が低ければ出願できない。
法学部の推薦の出願要件には、高校で上位5%の成績と明記されている。評定平均値に換算すると4.6以上と推測される。合格者の出身高校は難関高校の名前が並ぶ。それらの高校でそれだけの評定があれば、一般選抜でも東大に受かるだけの学力があるはずだ。
一方で、探究学習のコンクールで大きな賞をとって共通テストの得点がとれても、評定平均値がそこまで高くなかったり、中堅高校の生徒だったりすると残念な結果に終わる例はいくつもある。前者は一般選抜で東大に入学したり、後者は慶應のSFCや立教の総合型選抜で進学したりしている。
今回、「数学オリンピックで金メダルをとったが東大の推薦に不合格になった」とされている学生は、SNSによれば、共通テストの点数は申し分がなく、抜群の実績も挙げている。ただ、評定平均値が伸び悩み、総合点で合格点に達しなかった可能性があるのではないか。
公募制の学校推薦型選抜も評定平均値が合否に影響しないことはまずあり得ないのだ。もちろん例外はあるものの、なにかに特段秀でていても、それだけでは推薦入試や総合型選抜に通らないのが現実なのだ。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(ともに青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも更新中。