*15:15JST 科研製薬:新薬パイプライン潤沢、2028年3月期に利益貢献本格化、配当利回り4.5%超は魅力
科研製薬<4521>は、1948年設立の製薬企業であり、医薬品・医療機器・農業薬品を手がける薬業と不動産賃貸の2事業を展開する。患者のクオリティ・オブ・ライフ向上への貢献を企業理念に掲げ、皮膚科・整形外科を主力領域として長年にわたり国内市場での地位を築いてきた。売上構成比は薬業が売上高の大半を占める。これまでも自社創薬と外部導入を両輪としたパイプライン構築を進めてきたが、近年はその取り組みをさらに強化し、研究開発型企業としての進化を一層加速させている。主力製品は、整形外科領域の関節機能改善剤アルツ及び皮膚科領域の爪白癬治療剤のクレナフィン群である。この2製品群で同社売上の約4割を占めるが、整形外科・皮膚科領域を中心とした国内外の多彩な製品群が事業基盤を支えている。なお、クレナフィン群の特許切れに伴う売上減少を、新薬開発及び海外展開によりカバーする方針である。
同社の強みはMR(医薬情報担当者)の営業力にある。アルツは発売から40年という節目をまもなく迎える製品であるが、医師のフィードバックを継続的に製品改良へ反映させることで信頼関係を積み上げ、ヒアルロン酸関節注射剤市場でシェア80%超を維持している。業界全体の傾向と同様に同社もMR体制を縮小しているものの、少数精鋭化により1人当たり売上高は増加傾向にある。新薬開発においては、2026年2月時点で12品目のパイプラインを擁し、複数品目がP3段階(第III相臨床試験)にある。アタマジラミ症治療剤KAR及び難治性脈管奇形治療剤KP-001は申請準備中であり、2028年3月期早期の上市が見込まれる。海外では、原発性腋窩多汗症治療剤エクロックが2026年1月から韓国での販売を開始した。また、2025年3月の米国Aadi社買収により、米国で既に上市されている希少がん治療剤FYARRO(ファイアロ)に加え、米国における販売網及び希少疾病用医薬品のプラットフォームを獲得した。FYARRO事業の売上は着実に拡大しており、1〜2年以内にAadi社の本格的な利益貢献が期待される。
2025年3月期は、売上高94,035百万円(前期比30.5%増)、営業利益21,034百万円(同121.1%増)、経常利益21,279百万円(同113.8%増)、当期純利益13,945百万円(同73.8%増)であった。アトピー性皮膚炎を対象に開発を進めていたNM26の知的財産権をジョンソンエンドジョンソン
2026年3月期第3四半期は、売上高57,617百万円(前年同期比24.2%減)、営業利益554百万円(同97.8%減)、経常利益1,172百万円(同95.5%減)、四半期純利益1,398百万円(同92.7%減)であった。前年の大型一時金の剥落に加え、クレナフィンのパテントクリフ(特許切れによる売上減)の影響が顕在化し、減収減益となった。クレナフィン群の減収の主因は、自社子会社によるAG(オーソライズド・ジェネリック)の市場への投入及び後発品使用を促進する近年の薬事行政の動向によるものである。同社は他社後発品参入に先んじてAGを市場投入することで影響の縮小を図ったものの、AGは先発品と比べ薬価が概ね半分程度にとどまることから、売上の落ち込みを補いきれなかった。加えて、研究開発費を中心とする販管費の増加も利益水準を圧迫する要因となった。
2026年3月期通期では、売上高86,300百万円(前期比8.2%減)、営業利益2,100百万円(同90.0%減)、経常利益2,800百万円(同86.8%減)、当期純利益2,300百万円(同83.5%減)を予想している。売上面では、FYARRO事業は堅調に推移したものの、クレナフィン群の落ち込みと前年の一時金の剥落により減収を見込む。利益面では、研究開発費を前期比で大幅に増加させたほか、複数パイプラインの開発進捗やAadi社の運営費用の増加が重なり、大幅減益となる見通しである。
長期経営計画2031「Kaken Vision for Transformation」では、2032年3月期に売上高1,000億円、営業利益285億円、ROE10%以上を目標に掲げる。主要施策は、研究開発、海外展開、経営基盤強化の3本柱である。10年間の戦略投資総額を当初計画の2,000億円から2,600億円以上に引き上げており、KAR・KP-001など8品目の上市を目指す。M&Aについては、Aadi社の米国販売体制を活用できる製品獲得をターゲットとするほか、早期フェーズの導入も視野に入れ、バランスよく検討していく方針である。2027年3月期を業績のボトムと位置付け、新規上市品の売上貢献が本格化する2028年3月期以降に回復軌道へ乗せる計画である。既存事業で安定的な収益基盤を維持しつつ戦略投資を継続し、利益構造の転換を図る。
株主還元については、2025年4月に一部見直しを行い、2025年3月期実績の配当金である1株当たり190円を下限としたうえで、配当性向30%以上、総還元性向50%以上とする方針としている。当該方針のもと、2026年3月期以降の長期経営計画(7年間)において、株主還元総額は500億円を見込んでいる。2026年3月期は190円を予想しており、配当性向は200%超となる見込みである。大幅減益下でも190円の下限配当を維持する背景には、豊富なパイプラインに裏付けられた将来的な収益水準回復への確度の高さがある。足元の株価はPBR1倍超、PERは70倍近い水準にあるが、新薬の進捗及びAadi社を中核とした海外事業の収益貢献が、中長期的な株価評価の材料となろう。配当利回り4.5%超は魅力的である。
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