*16:16JST 高市内閣支持率41% 中国は支持率下落をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。
7月19日、毎日新聞は高市内閣の世論調査の結果を<内閣支持率が大幅下落41% 不支持率が逆転 毎日新聞世論調査>(※2)という見出しで発表した。中国のネットではすさまじい勢いで「大幅下落」に反応したが、中国政府自身は「ほぼノーコメント」で、案外に「内政には干渉せず」という姿勢だ。「高市発言」にあれだけ強く抗議し対日制裁まで続けている中国政府は、何を考えているのかを考察してみた。
◆毎日新聞の世論調査 女性天皇賛成者の反発も影響か
冒頭に書いた毎日新聞の報道によれば、高市内閣の支持率は「6月20、21日実施の前回調査(51%)から10ポイント減の41%に下落した」とのことだ。逆に「不支持率は前回調査(35%)から9ポイント増の44%で、支持率を逆転」している。
その報道には【グラフで見る】女性・女系天皇に賛成の有権者の割合(※3)という見出しのテーマがあったのでクリックしてみたところ、「女性が天皇になることについてどう思うか?」という質問に対する世論調査の結果が示してある。それによれば「女性天皇に賛成で、女系天皇も賛成」が40%で、「女性天皇に賛成だが、女系天皇には反対」が33%になっている。「女性天皇に反対」はわずか6%でしかない。つまり「女性天皇に賛成」だけを拾い上げると、日本人の73%が現在の天皇の娘である「愛子内親王」に次期天皇になってほしいと思っていることがうかがえる。
高市内閣は、そういった思いを抱いている日本国民の心に寄り添わず、それを無視して「皇室典範」改正案を強引に通したことになろう。その結果、このような高市内閣を支持したいと思う日本人が急減するのは当然のことなのかもしれない。
加えて「力強い景気対策」を打ち出していたはずなのに有効な物価高対策が打ち出されておらず、その原因の一つとなっている過度な円安の是正にも注力していない。国民の感情を逆なでする「皇室典範」改正や国民の関心が薄い「副首都構想」などを最優先にされたのでは、「党利党略」としか思えず、この内閣を肯定したいとは思えなくなる日本国民が増えていくのは当然の帰結だと思われる。
それでは中国は、これらをどう見ているのだろうか?
中国政府や官側メディアおよび一般ネット民などの反応を見てみよう。
◆中国政府:支持率には沈黙、政策路線だけを問題視
中国外交部は、支持率49%や41%について公式には論評していない。毎日新聞の支持率発表が7月19日で、本日はまだ7月20日だということもあるかも知れないが、少なくとも7月15~17日の記者会見では、高市内閣の支持率に関する発言は確認できていない。日本国内の政局については、これまでも基本的に「日本の内政」として直接評価を避けてきた。
ただし、日本の政策については明確に批判し続けている。
たとえば7月2日、高市総理の「新しい自由で開かれたインド太平洋」構想を、「表向きは自由・開放を掲げながら、実際には対立と対抗を狙うものだ」と批判している。
また6月18日には「高市は対話を唱えながらG7で中国包囲を進めている」として、「片手で対話、片手で対抗」と批判している。対日輸出規制についても、日本の「再軍事化」や「核武装の動きを抑えるためだ」と説明し、規制の手を緩めていない。
◆官側メディア:高市内閣支持率下落原因は物価と統治能力
7月18日の中国中央広播電視総台系の分析(※4)では、中国現代国際関係研究院の劉軍紅研究員は、それまでの高市内閣支持率下落に関する原因を、以下のように説明している。
・物価高への対応が有権者の期待とずれている
・若者が賃金上昇や株高の恩恵を受けていない
・現金給付を望む層と、消費税減税を重視する高市政権との間にずれがある。
・高市総理の国会への対応など、強引な政権運営に対する不満
・無党派層と高齢層の離反
(以上、支持率低下の原因に関する分析)
劉軍紅研究員はさらに、「支持率50%割れは直ちに退陣を意味しないが、自民党内の矛盾を激化させ、翌年の総裁選に影響する可能性がある」と分析している。
他の官側メディアの情報を考察すると、現段階では、支持率低下を「日本国民が対中強硬路線を拒絶した結果だとは分析していない」というのが特徴だ。主因はあくまで国内経済と国内統治能力だと分析しているので、支持率低下に関する政府見解は見られないという結果を招いているものと考えることができる。
7月19日の毎日新聞による「高市内閣支持率41%に大幅下落」報道に関する官側メディアの報道としては、一つ、7月20日の環球時報WeChat公衆号が書いている<高市内閣、支持率大下落>(※5)が挙げられるが、それも毎日新聞が報道したデータを書いているだけで、評論の言葉は何一つ加えていない。
◆中国の商業メディアやネット民の反応:政権末期と大喜び
その一方で、中国の商業メディアやネット民などの間からは、7月19日の毎日新聞世論調査結果「高市内閣 支持率41%で不支持率44%」が発表された瞬間から激しい反応が溢れ、筆者のスマホにも間断なく以下のような類のメッセージが流れてきた。
・高市の支持基盤が崩壊したぞー!
・遂に完全崩壊だー!
・政権末期だー!
・政治的終幕寸前!
・支持率がまた暴落した!毎日のように下がっている!
・・・
などなどだ。
◆中国政府はむしろ「新軍国主義」に注目
中国政府はむしろ日本の「新軍国主義」に注目し、高市内閣が崩壊しても、その後に現れるかもしれない小泉進次郎(防衛大臣)の最近の右傾化を警戒している。
たとえば7月20日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」が発表した<日本の防衛大臣が「議論が必要だ」と発言 この危険な動向は外界の警戒を引き起こしている 日本は再び「非核三原則」の緩和を強く求めている>(※6)という長い見出しで、小泉氏の核問題に関する発言を大きく取り上げ、「日本の右翼勢力が核のタブーに挑戦しようとしている」と分析している。この論考では、高市氏だけでなく、小泉氏や日本維新の会を含む広範な政治勢力が、非核三原則や戦後の制約を徐々に崩しているという見方を展開している。
すなわち、高市内閣が下野しさえすれば日本の右傾化が止まるとは考えておらず、むしろ小泉氏の最近の発言を、高市後にも続く構造的な変化の証拠として扱っているのである。
中国が日本の防衛力強化を強く問題視する理由の一つは、それが「台湾統一」への日本の関与と関係してくると中国は思っているからだ。事実、日本は防衛力強化の必要性の理由を、主として「台湾有事」に求めている。
日本はアメリカから独立した国家であるはずなのだから、独立国家として自国の防衛力を強化する権利がある。このときに「台湾有事」を理由にしないということが肝心ではないかと思うのである。なぜかに関しては、拙著『G2構想 勝つのは米国か中国か』の【終章 台湾統一へのカウントダウン】で詳述した。
高市内閣の支持率が大幅下落しようと、中国の日本に対するこの姿勢は変わらないと見ていいだろう。
この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。
高市早苗総理大臣(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://news.yahoo.co.jp/articles/433af3dfe647fa2c8859e77b161a1ff9d14c3c32
(※3)https://mainichi.jp/graphs/20260714/mpj/00m/010/034000f/20260714k0000m010044000p?inb=ys
(※4)https://news.cri.cn/20260718/91ba89fc-84b6-4186-cef2-6a80f7a4fdce.html
(※5)https://mp.weixin.qq.com/s/lHy6T0t6Z2yzqsaEgf-WhQ
(※6)https://mil.huanqiu.com/article/4SRtaZdmgQP
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/fe1f547541c22205d4031cf15b05f5faf345d443
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