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【注目トピックス 経済総合】黒船から白船へ:米台沿岸警備隊の写真とインド太平洋における海洋秩序の変容(1)【中国問題グローバル研究所】

*10:14JST 黒船から白船へ:米台沿岸警備隊の写真とインド太平洋における海洋秩序の変容(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)陳建甫博士の考察を2回に渡ってお届けする。

※この論考は7月29日の< From Black Ships to White Hulls: Taiwan US Coast Guard Imagery and the Transformation of Indo-Pacific Maritime Order>(※2)の翻訳です。

台湾がASEANの公式な外交文書に登場することはないものの、台湾と米国の沿岸警備隊の協力を示す写真の公開は、台湾がより実務的な形で地域に関与できることを示している。

マニラで開催されたASEAN関連会合で、マルコ・ルビオ米国務長官は、海洋の航行の自由や、国家による国際水路の支配がもたらすリスクを広範に議論する中で、台湾海峡に言及した。一方でASEANの共同声明は、こうした広範な戦略的枠組みを織り込んでいない。国連海洋法条約、南シナ海における航行・上空飛行の自由、国際航路に使われている海峡の通過通航権については再確認したが、台湾海峡には言及しなかった。

この違いはASEANの戦略的な線引きを反映している。加盟国は開かれた海洋秩序を支持しているが、台湾を地域の集団安全保障に組み込むことには依然として消極的だ。しかしそのわずか数日後、米国在台湾協会は台湾の海巡署(海上保安庁に相当)の巡視船「台北」が米国沿岸警備隊の巡視船ミジェットと並走する写真を公開した。添えられたコメントによれば、捜索救助、災害対応、海洋保護、違法漁業対策、海上での麻薬取り締まりに備えるための活動だ。

日付、場所、作戦名は記されていない。それでもこの写真は、主に覚書や実務者交流、水面下の作戦での接触を通じて築かれてきた関係を公に示すこととなった。台湾はASEANの外交文書で言及されることはなくとも、より実務的な海上法執行ネットワークの一角を占めているのだ。

1枚の写真に2隻の船体
写真の公開は計算された戦略的情報開示だった。米国政府は「共同パトロール」「台湾海峡作戦」「軍事演習」といった表現を避けながらも協力関係が分かるようにした。一般に公開することで政治的支持と運用面での円滑な連携を示す一方で、曖昧さを保つことで当面のエスカレーションを抑制し、今後の協力拡大に向けた余地を残している。

写真には2隻の大型艦艇が写っている。台湾の4千トン級「台北」は主力の巡視・救助船だ。ミジェットは長期展開、法執行、海軍作戦との統合が可能なレジェンド級の国家安全保障巡視船だ。5カ月にわたる西太平洋展開中、ミジェットは米国第7艦隊の戦術指揮下で活動し、日本、フィリピン、韓国、シンガポールと共同作戦、実務者交流、能力構築活動を実施した。

台湾と米国は2021年に沿岸警備作業部会を設立し、海洋資源保護、違法漁業対策、捜索救助、環境保護、専門訓練に取り組んでいる。今回の写真公開により、その関係は制度上の協力から、広く認知される実務的な連携へと移行した。台湾はもはや保護を必要とする単なる島には見えない。この写真は、執行権限と運用資産を保有し、地域に公共的利益を提供しうる海洋アクターとしての台湾を映し出している。

ホワイト・ハルであることの意味
「ホワイト・ハル(白い船体)」は船舶の正式な分類ではない。この用語は海洋安全保障の分野において、沿岸警備隊や海上法執行機関と、各国海軍の艦艇「グレー・ハル」を区別するために用いられる。この区別は塗装の色だけでなく組織の任務にも関係している。グレー・ハルの主な役割は軍事的抑止、戦闘、戦力投射だ。他方のホワイト・ハルは法執行、捜索救助、漁業管理、税関執行、環境保護、航行の安全を目的としている。

ホワイト・ハルは軍艦では通常立ち入ることのできない政治空間で活動できる。沿岸警備隊間の協力に相互防衛条約は不要だ。捜索救助演習も軍事力を統合する必要はない。違法漁業に対する措置は広範な国際的正当性を有している。つまり通信手順、船舶の識別、証拠収集、協調航行を、正式な同盟政治に発展させることなく進めることができる。

政治的ハードルが下がるからといって戦略的効果が失われるわけではない。主権争いやグレーゾーンでの対立の最前線で沿岸警備隊が活動することが増えている。沿岸警備隊は海軍同士の対立というような印象を直ちに生み出すことなく、管轄権を主張し、自由な出入りを確保し、威圧行為を記録し、競合する法執行権の主張に異議を唱えることができる。

この二面性を体現しているのがミジェットだ。この巡視船の所属は法執行機関だが、西太平洋への展開では人道支援活動、海上法執行、同盟国の能力構築、後方支援、海軍との連携という役割まで担っていた。ホワイト・ハルは制度上、海軍とは区別されているが、両者の活動領域はますます重なるようになっている。

幕末の黒船からインド太平洋の白船へ
日本の読者にとって「ホワイト・ハル(白船)」は歴史上の出来事を連想させる。1853年にマシュー・ペリー提督が浦賀に来航した事件は、黒船のイメージで日本人の記憶に刻まれた。蒸気動力、重武装、砲艦外交を目にした徳川幕府は、西洋主導の国際秩序と向き合うことを余儀なくされた。黒船は外部からの圧力、制度的混乱、日本の強制的開国を象徴するものとなった。

現代の西太平洋におけるホワイト・ハルは、これとは異なる大義名分に基づいている。現代の米国の海洋力は、捜索救助、法執行、災害救援、漁業保護、情報共有、パートナーの能力構築を通じて地域の制度に入り込んでいる。黒船は集中的に威圧することで通商を求めたが、ホワイト・ハルは継続的な協力と制度的な連携を通じて影響を積み重ねている。

どちらの形も米国の海洋力を表すものに変わりはないが、地域へのアクセスと影響力を行使する仕組みは異なる。黒船外交が一度の接触で集中的に威圧したのに対し、ホワイト・ハルによる協力は、継続的な作戦、共通の基準、制度的な連携を通じて影響力を浸透させている。また、海軍戦略、同盟、抑止力にもつながっている。

黒船は劇的な接触を通じて日本を変革した。ホワイト・ハルは共通の通信手順、互換性のある訓練、情報共有、捜索救助体制の連携、海事機関の職員同士の交流といった日常的な実務を通じて地域秩序を塗り替えている。制度を通じたその累積的な効果は、一度の航海より長く持続するだろう。

「黒船から白船へ:米台沿岸警備隊の写真とインド太平洋における海洋秩序の変容(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。

米国の沿岸警備隊と台湾の海巡署の船が並走(写真:米国在台協会)

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7460

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