*15:48JST 三井ハイテック:電動車用モーターコアで世界トップシェア、1Q好調で通期業績を上方修正
三井ハイテック<6966>は1949年創業、祖業であるプレス用金型・工作機械の超精密加工技術を土台に、電動車(HEV・PHEV・BEV等)の駆動・発電用モーターコアを手掛ける電機部品事業、半導体用リードフレームを手掛ける電子部品事業を展開する。2026年1月期の売上構成比は電機部品70.8%、電子部品27.3%、金型・工作機械1.9%。電動車生産台数における同社モーターコアの搭載率は世界トップシェアである。生産面では国内(北九州・岐阜・阿蘇)に加え、北米(カナダ・メキシコ)、欧州(ポーランド)、中国(上海・広東・天津)・台湾・東南アジア(タイ・マレーシア・シンガポール)と電動車・半導体の主要市場に拠点を構えており、グローバルで統一品質の安定供給ができる体制を築いている。
同社の競争力の源泉は、祖業・金型の精密加工技術にある。モーターコアは電磁鋼板の薄板を高速プレスで打ち抜き、積層して製造されるが、同社は積層・結束等の独自工法を開発し、生産装置も内製する。従来のカシメ工法に加え、接着工法でも量産対応済みで、あらゆる電動車タイプ・工法に全方位で応えられる。また、開発設計の段階から顧客がモーターに求める性能を確認しながら仕様を作り込む開発提案力も同社の強みであり、日系自動車メーカーとの良好な関係性と長年の量産実績が、高い参入障壁を形成する。競合としては国内では黒田精工などが挙げられ、中国勢も技術力を高めているが、同社は品質・信頼性およびグローバル拠点を活用した安定供給での差別化を貫く方針である。電子部品事業においても、エッチング加工が主流であった時代に金型プレスによるリードフレームの量産化を実現した先駆者であり、現在はプレス・エッチング両技術に貴金属めっき、超精密な曲げ加工までを社内で一貫対応できる。電源管理用などレガシー半導体向けを軸に、競合他社に対して技術面で優位に立つ。ICやパワー半導体に使用されるリードフレームなど、様々なラインナップを揃えているが、AIデータセンターに関連するリードフレームとしては、電源管理に使われるレガシー半導体向けなど、一部に限定されているようだ。
2027年1月期の第1四半期は、売上高618.86億円(前年同期比13.2%増)、営業利益44.33億円(同27.8%増)の大幅増収増益で着地した。海外を中心にハイブリッド車(HEV)向けを中心とした需要増に伴って販売数量が増加したことに加え、駆動用の高単価案件の寄与が業績を押し上げた(第1四半期のモーターコア売上構成はHEV向け84%、BEV向け5%、その他11%)。電子部品も、顧客の在庫積み増し等による販売増や円安影響に加え、貴金属価格上昇の製品価格への転嫁により増収となったほか、中国の家電購入補助策等も追い風となった。これを受け、会社は6月12日、通期予想を売上高2,540億円(前期比16.3%増、従来予想2,330億円)、営業利益145億円(同14.6%増、従来予想110億円)へ大幅に上方修正した。下期を中心に中東情勢悪化に伴う資材価格やエネルギー価格上昇等の費用増を織り込むが、上期における電機部品・電子部品事業での販売増を主因に当初予想を上回る見込みとなる。なお、為替感応度は対米ドル1円の変動で通期売上高約10億円(モーターコア6億円・リードフレーム4億円)、営業利益約0.8億円だが、今回の上方修正は数量・製品構成の実需に裏打ちされたものとも捉えられる。
市場環境としては、2026年以降の電動車市場成長は継続し、現中計期間3カ年のCAGRは+15.3%を見込む。ただ、2025年3月公表中計策定時点と比べて電動車市場はグローバルで成長鈍化が見られ(HEV、BEV)、特に欧州や北米でのBEV需要の失速が顕著となっていた。
このような環境下で、中期経営計画(2026年1月期~2028年1月期)については、2026年3月に財務目標を修正し、最終年度2028年1月期に売上高2,630億円、営業利益150億円(営業利益率5.7%)、ROE8.0%以上、3カ年設備投資960億円に修正していた。新規案件の立ち上げが重なる2028年1月期を収益性の底とし、2029年1月期以降は生産数量の増加とともに利益率が改善へ向かうシナリオだった。ただ、3月に中期経営計画を下方修正した際の市場環境と現時点の状況とはやや乖離がある。旺盛な需要に支えられ販売が好調に推移していることに加え、為替影響等により今期(2027年1月期)業績の上方修正を発表。今期予想の売上高2,540億円は既に中計最終年度目標に接近しており、リードフレームの市況によっては前倒し達成も視野に入る。メキシコ新工場の立ち上げをはじめ欧米での現地生産体制の整備も進んでおり、市場成長のタイミングを逃さない先行投資が着実に進捗している。
株主還元は、成長投資の拡大と安定的・継続的な配当を両立する観点から、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を目安とする方針を堅持する。今期の年間配当は前期比1円増配の19円を予定。株価は決算発表と上方修正を好感して急伸し、6月17日には1,350円前後まで水準を切り上げた。足元、今期予想ベースのPERは17倍前後、PBRは1.4倍程度、配当利回りは1.9%程度で推移している。
総じて、三井ハイテックは超精密金型という祖業の技術を核に、自動車の電動化(モーターコア)とパワー半導体(リードフレーム)という二つの構造的成長市場を押さえる開発型ものづくり企業である。前期に欧州BEV関連の損失処理という膿を出し切った直後、北米を中心とする堅調なHEV需要と高単価案件の獲得により一転して増益路線へ回帰している。今後の焦点は、HEV向け需要の持続性、先行投資が続く海外モーターコア拠点の収益性改善、そしてレガシー半導体市況の本格回復の三点である。会社は環境負荷低減への貢献を掲げ、電動車とパワーデバイス双方の成長を取り込む方針を示しており、9月に予定される第2四半期決算で上方修正後計画に対する進捗を確認したい。
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