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法医解剖医が見た「異状死」の現場
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法医解剖医が警鐘をならす「美容整形」の最大のリスク 人が亡くなるような事例はほとんどが麻酔事故 手術手技の問題ではなく「麻酔科医の不在」が事故に直結

美容整形手術では、麻酔科医がいないことも珍しくないという(イメージ)

美容整形手術では、麻酔科医がいないことも珍しくないという(イメージ)

 昨今、「美容整形」をする人の存在は珍しくもなくなった。しかし、目にする情報は「成功」したケースが圧倒的に多く、美容整形業界の“闇”はなかなか表に出てこない。

 生きている人を診察する医師とは異なり、法医解剖医の仕事は「なぜ死にいたったのか」という問いに答えることだ。年間300体もの解剖を手掛ける法医解剖医で、『法医学教授が教えている 死体の授業』の著者・飯野守男氏(55)は、日々“普通の死”ではない「異状死」の原因を解明すべく奔走する。今回は、美容整形に潜む本当のリスクを紹介する。【法医解剖医が見た「異状死」の現場・全4回の第3回】

美容整形で「麻酔事故」が多い理由

 美容整形にも、部位や目的によってさまざまなものがありますが、基本的に人が亡くなるような事例の原因はほとんどが麻酔事故です。手術手技の問題ではない。麻酔科医がいないことが多いのです。

 通常、外科手術をする病院には麻酔科があり、麻酔科医は執刀医らとともに手術室に入り、全身麻酔を担当します。一方で、美容外科はなるべく儲けを多くしたいですから、麻酔科医の人件費をかけないケースがよくあります。ただでさえ保険診療が効かない美容整形の料金は高額です。さらに麻酔代が追加され、総額がますます高くなるとなれば、他院との価格競争に負けてしまいます。麻酔自体は、医師であれば特に麻酔科医でなくてもかけていいんですね。もちろんその際、「麻酔科医」と名乗ってはいけませんが。

 そういうわけで、美容外科の場合、外科医1人でも執刀も麻酔も全部やってしまうということがよくあります。最初に麻酔をかけて眠らせたら、あとは自動で手術中の麻酔制御を行ってくれる自動麻酔器に任せて、手術する。麻酔の“手間”そのものは省けるかもしれませんが、どうしても手術中、患者の体に何が起こっているか、細かいところまで把握することが難しい。ちゃんと呼吸器が動いているか、血圧はどうなのかとか……そうこうしてるうちに、事故が起きるということです。

 私が経験した美容整形の事例は麻酔事故ばかりです。ただし、麻酔が切れて亡くなるということはないですね。どちらかというと麻酔薬が過剰に投与されてしまい、血圧が下がったり、麻酔薬中毒で亡くなるケースが多いです。

『法医学教授が教えている 死体の授業』の著者でもある、法医解剖医で鳥取大学医学部教授の飯野守男氏

『法医学教授が教えている 死体の授業』の著者でもある、法医解剖医で鳥取大学医学部教授の飯野守男氏

エラ削りや脂肪吸引での麻酔事故

【著者プロフィール】
飯野守男(いいの・もりお)/鳥取大学医学部法医学分野教授、副学部長。1971年鳥取県米子市生まれ。鳥取大学医学部を卒業後、大阪大学大学院で博士号を取得。京都大学助教、大阪大学講師、ビクトリア法医学研究所(オーストラリア)客員研究員、慶應義塾大学准教授を経て、2015年に現職に就任。医学生向けの死体の講義(法医学の講義、実習)が人気を博している。鳥取県唯一の法医解剖医として、県内の死体検案・解剖を一手に引き受ける傍ら、死後CT診断の第一人者として、オートプシー・イメージング学会副理事長も務める。ドラマ監修やテレビ出演も複数。著書に『死因不明社会2 なぜAiが必要なのか』(講談社刊、海堂尊らと共著)など。単著は『法医学教授が教えている 死体の授業』(飛鳥新社)が初となる。

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