AI相場が軟調な中で日立製作所が注目される背景は?(写真:EPA=時事)
10月15日には日経平均株価が3318円安と急落し、18日には米マイクロソフトが英国のAIデータセンター利用契約を打ち切ったと報じられた。撤退の背景にあったのは、最先端半導体の不足ではなく、送電網への接続の遅れだ。こうしたなか、注目したいのが日立製作所(6501)だ。同社傘下で送配電事業を担う日立エナジーの受注残は10兆円を突破。AI投資の拡大が続くなか、なぜ同社には中長期的な成長が期待できるのか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
世界のデータセンターで同時多発的に顕在化する構造的課題
AIデータセンターの稼働は今や「電力不足」という物理的な壁に直面している。10月18日、マイクロソフトが英AIクラウド企業・Nscale(エヌスケール)と進めていたデータセンター利用契約から撤退したという報道は、マーケットにおけるAIバブル崩壊の不安を一気に高めることとなった。10月15日に日経平均株価が歴代3位となる3318円安を記録したことも、投資家心理を急速に冷やし、その不安に拍車をかけた。
しかし、この撤退劇が示したものは、AIインフラを構築する上での最大のボトルネックが、最先端半導体(GPU)の調達から「電力網(グリッド)」の確保へと移行したという事実である。当初の計画では、2027年初めからNVIDIAのGB300 GPUを2万3040基使用し、マイクロソフトのクラウドコンピューティングサービスAzure向けに50MW規模のAI計算能力を提供する予定だった。ところが、送電網から十分な電力を確保できるのは2030年代になる見通しだという。生成AIの学習および推論には膨大な計算資源が必要であり、最新のAIサーバーラックは従来のデータセンターと比較して数倍から十数倍の電力を消費する。それに伴う水冷システムをはじめとする高度な冷却設備への電力供給も不可欠であり、データセンターそのものが巨大な電力消費施設と化している。GPUが予定通り納品されても、電力を送るインフラが4年以上供給されないのであれば、施設の稼働は不可能である。
アンカーテナントであるマイクロソフトの撤退は、物理的なインフラ制約に基づく合理的な判断と言える。変圧器や送電網といった基礎的な電力インフラが整備されない限り、ハイパースケーラーが巨額の資金を投じて最先端の半導体をかき集めても、データセンターは利益を生み出せない状況に陥っている。この需給のミスマッチはエヌスケールに限った話ではなく、米国をはじめとする世界の主要なデータセンター市場で同時多発的に顕在化している構造的な課題といえる。
