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田代尚機のチャイナ・リサーチ
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「フィジカルAIは今後1~3年で重大なブレークスルーを迎える」人型ロボット大手・宇樹科技の王興興CEOが見据える「ChatGPT時刻」の到来

人型ロボットの実用化への道は(宇樹科技の王興興CEO 。Getty Images)

人型ロボットの実用化への道は(宇樹科技の王興興CEO 。Getty Images)

 生成AIの急速な進化が社会構造まで変革しようとしている。そうしたなか、「フィジカルAIの分野でも重大なブレイクスルーが近づいている」という指摘が出てきた。高性能AIを搭載した人型ロボット実用化に向けた開発は、世界各国で着実に進んでいる。中国株アナリスト・田代尚機氏がレポートする。

8月段階の発言から大きく前倒しされた「ChatGPT時刻」

 中国の人型ロボット大手メーカー「宇樹科技」の王興興CEOは10月22日、杭州市で「2026世界フィジカルAI大会並びに協力先エコシステム大会」を開催、「AIを信じる、できる限り信じる」と題して講演を行った。その内容について市場関係者が注目したのは「フィジカルAIは今後、1~3年で重大なブレークスルーを迎える。早ければ1~2年、遅くとも2~3年で訪れる」と発言した部分である。

 王CEOはこれまで度々、重大なブレークスルーが訪れる時期を「ChatGPT時刻」と表現してきた。これは、フィジカルAI産業が種から芽を出す時期を意味する。AIで言うところの、(AI革命の起点とされる)ChatGPTが初めて公開された2022年11月に相当する時期で、フィジカルAIに関するその時刻は度々変更されている。

 2025年8月の世界ロボット大会では「順調にいけば1~2年、あるいは2~3年、遅くとも3~5年」でその時期を迎えると発言していたが、2026年8月の世界ロボット大会では「早ければ2~3年、遅ければ5または10年」といった表現に後退、しかし今回は一転、早ければ1~2年と大きく前倒しされている。オープンAIは9月3日、高性能モデル「GPT-6Astra」を発表したが、同社がそれを自社の人型ロボットに使用、いろいろな作業をさせてみたところ、極めて良好な結果が得られた。それが修正の主な理由だと説明している。

 絵を描かせてみたところ、単に文字で指示しただけで、絵具を変える際には絵筆をきちんと洗うなど、ロボットが自ら判断して描く工程を正確に実行し、絵を完成させることができた。また、囲碁を打たせてみたところ、最初から碁盤を認識していたばかりか、碁石を正確な位置に置いていた。こうした実験が全くトレーニングを行っていない条件下で行われたという点を王CEOは強調している。

 とはいえ、「GPT-6Astra」も万能ではない。たとえば精密部品の組み立てを行うことについては難易度が高いようだ。作業方法の理解に加え、物体の位置、受ける力の状況などを適宜調整し、動作を行わなければならないが、環境変化を正しく感知し、失敗したときにやり直しするといった点において、依然として明らかに力不足である。

 人型ロボットには身長・体重・体形などにおいて制約があり、AIや電池を格納するための物理的スペースをどうやって確保するのか、放熱をどうするのかといった難しい問題がある。人類に替わってあらゆる労働をこなせるレベルの汎用ロボットを作ろうとすれば、現時点ではこうした難問について解決の目処が立たない。

 そこで、「宇樹科技」は“大脳”の機能については、クラウドや端末においたAIで処理し、それほど大きな計算資源を必要としない“小脳”に当たる部分、つまり“低遅延が必須”となる処理を行う部分だけを身体に格納するといった方向で開発を進めている。「GPT-6Astra」は大脳になりえるレベルに近付いており、次世代となるGPT-7のレベルになれば、脳の部分に限定すればChatGPT時刻を通過すると確信しており、それが前述の予想短縮につながったようだ。ちなみに、同大会の座談会を通じて王CEOは「過去十数年における私の最大の間違いはAIを信じる気持ちが十分でなかった点である」とまで発言しており、「GPT-6Astra」の性能の高さを絶賛している。

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