東京駅で並ぶJR東日本の新幹線電車(左E7系・右E5系)。どちらもドイツ・ミュンヘンに本社を置くメーカー(クノールブレムゼ)の基礎ブレーキ装置を採用している(画像:筆者撮影)
ドイツ・ミュンヘンに本社を置くクノールブレムゼが、日本での鉄道車両用製品の生産を予定している。なぜドイツから離れた日本で生産拠点を持とうとしているのか。交通技術解説者・川辺謙一氏が同社鉄道部門の日本法人の取締役副社長を取材し、レポートする。
日本を拠点にしてアジア展開を目指す
結論から言うと、日本に生産拠点を持つ理由は3つある。1つ目は、日本の鉄道事業者に対する製品の製造・販売・アフターフォローをスムーズに行うこと。2つ目は、最高レベルの品質と、現地調達品をより多く活用するというニーズに対応すること。3つ目は、アジアの鉄道ビジネスのハブをつくることだ。つまり、日本だけでなく、韓国や香港、台湾、東南アジアの国々とのビジネスを円滑に進める目的があるのだ。
筆者はこの計画を知り、驚いた。日本の鉄道市場ではめずらしい話だからだ。
日本の鉄道市場は、鉄道事業者の数が多いうえに、それぞれが独自の規格を採用しており、ヨーロッパとは商習慣が異なるという特殊性がある。ヨーロッパの鉄道メーカーにとっては、それが障壁となり、日本の鉄道市場への参入がむずかしかった。
ところが筆者は、クノールブレムゼ鉄道システムジャパンの会議室で、同社が日本に鉄道車両向け製品の生産拠点を持ち、サービスやトレーニングを提供するアジアの鉄道ビジネスのハブにするという計画を初めて聞いた。
120年以上の歴史を持つ老舗メーカー
クノールブレムゼは、1905年の創業から120年以上の歴史を持つ老舗メーカーだ。なお、社名の「クノール」は創業者の名前、「ブレムゼ」はドイツ語の「ブレーキ」に由来する。
同社は、鉄道車両だけでなく、トラック・バスなどの商用車向けのブレーキシステムや各種制御システムなどの機器を製造・販売している。その機器は、ヨーロッパのみならず、世界の多くの国や地域で使われている。
世界にあるクノールブレムゼの拠点。同社は鉄道車両だけでなく、トラック・バスなどの商用車向けの機器を製造・販売している(画像:クノールブレムゼ鉄道システムジャパンのパンフレット)
同社の鉄道部門は、2005年にマイクロエレトリカ(高圧開閉器などの電機品)を、2026年1月にデュアゴン(車両用の組み込み電子機器や信号システム)をグループに加え、ブレーキ以外の製品にも事業を広げている。

