葬儀スタッフの多様化も進んでいる(イメージ)
昨今、学歴不問で飛び込める業界でも「大卒」は増えた。背景には人手不足でブルーカラー職の賃金が上昇し、ホワイトカラーから転職するケースや、高卒が多い業界に飛び込めば「大卒」が武器になるなど、さまざまな要因があるだろう。
約30年前、葬儀業界に飛び込んだ1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏は、就職当時「大卒は珍しかった」と振り返りながら、自身が採用面接官を務めるようになったとき、「学歴」を重視したことを明かす。そこには葬儀業界の事情と、赤城氏なりの人材採用の考え方があった。【葬儀業界への就職で求められる資質・前後編の後編】
新卒座談会で驚いたマネージャーのトーク
私が、採用担当として「大卒」を求めるようになった理由の1つは、今でいう「多様性」を社内に持ち込みたかったからです。私の場合、就職氷河期ではあったものの、葬儀業界は人材供給が少なく売り手市場で、すんなり入社できました。ただし、社内で大卒は珍しかったので、入社してしばらくは出身大学名で呼ばれていたものです。
新卒で入社し、新入社員研修を受けていたある日のこと。社内で私たち新人に業界事情をざっくばらんに伝えることを目的としたマネージャーとの座談会が行われたのですが、30代の男性マネージャーが最近行ったという風俗の話を始めたのです。私は大学を出たばかりで社会人未経験だったとはいえ、女性社員もいる前でこれは「アウト」なのではないかと、さすがに驚きました。
後から分かったのですが、彼は仕事以外でコミュニケーションを取るときの話題が「酒」「ギャンブル」「風俗」しかなかったのです。
別の先輩は、夜勤の時に私が読んでいる本をのぞき込んで「シェイクスピアって有名なの?」と聞いてきました。入社して半年間は「訃報」を「ぼくほう」と読んでいたそうです。
どちらも悪い人ではありません。遺族に対する敬語の使い方が間違っていることも多かったですが、現場での対応力は高く、設営の早さやトラブル時の解決力といった面での安心感は抜群でした。ただ「葬儀社スタッフは人の『死』を扱う仕事なのだから、遺族に信頼されるためにも哲学や教養を持つべき」と私は考えていたので、こういう人たちばかりなのは問題だと思いました。当時「多様性」という言葉は使われていませんでしたが、属性として「大卒的なもの」が不足していると考えました。学歴で優劣を判断したのではありません。異なる文化的背景を持つ人が必要だと思ったのです。
当時は、「キリストは知っているが旧約聖書の内容は知らない」「日本の仏教葬は儒教の影響を受けているが、孔子が誰だか知らない」というスタッフがほとんどでした。無論、これらを知らなくてもお葬式の担当はできますが、宗教や歴史などについて、最低限の教養を持つ――もしくは、学ぼうとする欲がある人も必要なはずです。大卒を採用すれば、そういった人材を効率よく確保できると考えたのです。
