クノールブレムゼが手がける鉄道車両用製品。創業のきっかけになったブレーキシステムだけでなく、多くの機器を製造・販売している(画像:クノールブレムゼ鉄道システムジャパンのパンフレット)
34年以上かけて日本の鉄道市場に根を張る
今回取材に応じてくれたのは、クノールブレムゼ鉄道システムジャパン(同社の鉄道部門の日本法人。以下、日本法人)の取締役副社長のマイケル・ウィンクラー氏だ。ウィンクラー氏によると、クノールブレムゼは34年以上前に日本の鉄道市場に参入し、コンプレッサー(ブレーキなどに使う圧縮空気をつくる機器)の事業からスタートしたという。まさに時間をかけて日本の鉄道市場に根を張ってきた企業だ。
クノールブレムゼの製品は、すでに日本の鉄道車両で使われている。その代表例には、JR東日本・JR西日本・JR北海道の新幹線電車の基礎ブレーキ装置や、JR東日本山手線の電車(E235系)のオイルフリーコンプレッサー(詳細は後述)がある。これらは、同社がドイツやハンガリーなどにある生産拠点で製造し、日本に輸出したものだ。
クノールブレムゼ製のオイルフリーコンプレッサーを導入したJR東日本山手線の電車
日本法人は、鉄道車両用製品を販売するだけでなく、日本の鉄道事業者のニーズに応えるアフターサービスを提供している。先月より、埼玉県坂戸市から埼玉県滑川町にサポート拠点を移し、埼玉サポートセンターとして24時間体制で対応している。
それに加えて日本法人は、同拠点にて鉄道車両用製品の組み立てを行う工場を構え、2026年末ごろに稼働させる予定だ。ウィンクラー氏は、これによって「メイド・イン・ジャパン・フォー・ジャパン(日本のための日本製)」を実現できると述べた。なお、滑川町には、すでにクノールブレムゼの商用車向け製品の生産拠点がある。
ウィンクラー氏は、話の途中で「カイゼン」という言葉をたびたび口にした。「カイゼン」は日本語の「改善」を語源としたもので、現場の従業員が小さな工夫を継続的に積み重ねて業務や作業のムダを省くことを意味する。トヨタ自動車の生産方式を代表する言葉だ。
クノールブレムゼは日本の鉄道市場に参入し、顧客と対話し、日本の製造現場の流儀とも言える「カイゼン」を繰り返すことで進化してきた。その結果、日本の鉄道市場への参入から34年以上の時間を経て、ようやく日本に鉄道車両用製品の生産拠点を構えることになるのだ。
アジアの鉄道ビジネスのハブとして機能
ウィンクラー氏は、これまでの取り組みにふれながら、「クノールブレムゼの日本における次の章が始まる」と語った。これによって、日本の鉄道事業者や鉄道車両メーカーに近づきやすい環境が整うからだ。
またウィンクラー氏は、「私たちはたんなるドイツ企業ではない」と語り、日本をアジアの鉄道ビジネスのハブにする戦略を明らかにした。日本に生産拠点ができると、韓国や香港、台湾、東南アジアの国々などの技術者がそこに集まりやすくなり、オーバーホールやメンテナンスを学ぶトレーニングが容易になるからだ。
筆者はその話を聞いて、これが日本の鉄道業界の転換点になり得ると感じた。日本の鉄道市場は、先述した特殊性があり、ヨーロッパ企業が参入しにくい状況が続いていた。しかし、同社が日本に鉄道ビジネスのハブをつくるとなると、状況は変わる可能性がある。

