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投資

「日本株長期上昇シナリオ」は継続 弱気マインド払拭で日経平均2万5000円へ

2015年は中国経済の失速が顕在化し始め、これまで3年間、右肩上がりで上昇してきた日本株も、その上昇スピードを緩めざるをえなかった。エコノミストたちの中には、今後の日本株の上昇余地に、懐疑的な見方をする人も目立ち始めている。

そうした悲観論に真っ向から立ち向かい、「日本株の長期上昇シナリオは変わらない」と強調するのは、元ドイツ証券副会長・武者陵司氏だ。武者氏はアベノミクス相場が始まって以降、一貫して日本株への強気姿勢を崩さず、現実に日本株は大きく上昇している。

中国失速という大きな不安材料があるにもかかわらず、日本株が上昇し続けると予想するのはなぜか。武者氏が現在の世界経済の構造を読み解きながら、その根拠を解説していく。

今の世界経済は〝産業革命〟の真っ只中

世界経済の不確実性が増している。その原因は、中国経済の先行きが予断を許さなくなったからだ。中国は、長期間にわたって高い経済成長率を記録し、GDP(国内総生産)を世界第2位とすることに成功した。しかし、2015年、経済成長率が明らかにスローダウンし、高成長の維持が困難になっている。この中国経済の失速が世界経済に大きく影響し、日本のデフレ脱却は失敗、株価は低迷するといった悲観論が、またしても台頭しつつある。はたして、それは本当だろうか。私は、完全な杞憂に終わると考えている。順を追って証明していこう。

まず、世界経済が歴史的にどんな段階にあるのか確認しておきたい。現在、世界経済は、技術革新とグローバリゼーションの進展によって、人々の生活水準が向上していくという、かつてない〝産業革命〟の真っ只中にある。IT(情報技術)の技術革新がインターネットの普及をもたらした後、スマートフォンやクラウドコンピューティングを発達させ、あらゆる産業における生産性を著しく向上させた。その生産性の上昇が企業収益に大きく寄与し、年々、労働者の所得水準を引き上げている。

また、グローバリゼーション=国際分業の進展によって、世界各国の結びつきは強まり、技術革新によって生み出される〝富〟は、世界中に分配されている。このメガトレンドは変わらず、世界経済がより望ましい方向に発展していくのは自明であろう。

原油価格下落のプラス効果が顕在化へ

もう少し短いスパンで世界経済の動向を見ると、日米欧の先進国経済は、景気循環的にも、成長率を高めていく段階にある。わかりやすく野球のイニング数でたとえるなら、米国経済はまだ5~6回の中盤を過ぎたあたり、日本は4~5回の中盤の入口、欧州は3~4回の序盤が終わったところだろう。日米欧の景気拡大が途上である理由はいくつもあるが、中でも注目したいのは、今後、原油価格下落のプラス効果が顕在化するということだ。

これまで、原油をはじめとした資源価格の下落は世界経済の失速を示すとされ、エネルギー企業の業績も悪化した。しかし過去の例では、原油価格下落には疑似減税効果があり、価格下落のほぼ1年半後に、主要国(G7)の経済成長率を押し上げることが分かっている。原油価格が下落し始めたのは、14年の半ばから。ということは、16年中にも経済成長率の押し上げ効果が顕在化することになる。しかも、価格下落は長期間にわたり、下落幅も大きかったため、主要国の成長率が4%台に乗る可能性もある。
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一方、不安材料はやはり、中国経済の退潮だ。ただし、中国が退潮したから世界がダメになるというわけではなく、退潮した後は、どの国がそのポジションに取って代わるのか、という新しい国際分業の姿が模索されていくと思われる。中国経済が大きくなりすぎたために、この世代交代には軋轢が伴うだろう。人民元の急落で金融市場が混乱することも考えられる。

以上の前提から、16年の世界経済は、拡大する先進国経済と失速する中国経済の綱引き、という構図が当てはまるのではないだろうか。

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