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相続税ルール改正の余波、信託銀行も「遺言無効」を注意喚起

一度、遺言書を預けたからといって安心はできない

 2015年1月の制度改正で基礎控除額が大幅に減らされたことで、相続税は“お金持ちが払う税”から“庶民も取られる税”に変わった。肉親同士のいがみ合いにつながる“争族”を避けるために、遺言まで作成して備える家族も増えている。だが、国が“あと出しじゃんけん”で制度を変えれば努力は水泡に帰してしまう──。

 遺言における強い味方が大手信託銀行などが手がける「遺言信託」だ。

 遺言書作成の助言は当然のこと、公正証書作成の立ち会い、遺言書の保管、遺言通りに遺産を相続人に配分する遺言執行者まで務める制度だ。費用は最低でも100万~200万円かかるが、三菱UFJ信託では約3万3000人の遺言書を預かっている。

 だが、一度、遺言書を預けたからといって安心はできない。

 故人と生前“同居していた”親族が家を相続すれば、土地の評価額が8割減になる「小規模宅地等の特例」の適用が税制改正により今年4月1日から厳しく制限されることになった。これまでは、相続までの3年間、子供が賃貸生活を送っていたなら相続した土地に同特例が適用されるという、通称“家なき子特例”というものがあったが、これを活用した節税手法の多くはもう使えなくなった。

 このように、従来の節税手法に厳しい制限がかかると、遺言の内容を新制度に合わせて改めて書き換える必要が出てくるのだ。円満相続税理士法人代表の橘慶太氏が語る。

「例えば、子供が住んでいる持ち家の名義を変えることで、“家なき子”に見せる方法がありました。自宅を親に売却し、親から賃貸するケースや、富裕層においては親が子のために自宅を買い、家賃無料で住まわせるケースもありました。

 こうした不動産の名義を工夫して“家なき子”にみせる節税テクニックは今年4月の税制改正で使えなくなった。今後は子が持ち家を売却して親と同居するか、離れて生活するなら賃貸に住み続けるという本来の主旨に合致した“家なき子”しか認められません。

 とくに家なき子特例を受けるために『孫に遺贈』という内容の遺言書を作成済みの人は早く見直した方がいいでしょう。特例がなくなるだけでなく、孫への遺贈の場合、子供に相続させるより相続税が2割増しになる。節税対策の遺言が、逆に税金を多く取られることになりかねません」

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