投資

「老後2000万円不足」騒動で露呈した日本人の金融リテラシーの低さ

国民の金融リテラシー向上も必要な時代になった(写真:時事通信フォト)

国民の金融リテラシー向上も必要な時代になった(写真:時事通信フォト)

「老後に2000万円が不足する」とした金融庁金融審議会の報告書が宙ぶらりんとなる中、金融業界では戸惑いが広がっている。安倍政権が報告書の受け取りを拒否して「なかったこと」にしたことを“忖度”でもしているのか、「この件は“禁句”になっている」などと口をつぐむ金融関係者も少なくない。一方で、老後不安に駆られた人たちが老後資産を増やすためのセミナーなどに殺到。皮肉にも、国民の資産運用への関心はかつてないほど高まっている。

 こうした事態に、日本株運用で最大のファンドとなった「ひふみ投信」シリーズの運用責任者である藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者)は何を思うのか。藤野氏に聞いた。

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 与党が受け取り拒否、野党が政治利用という愚挙に出る中、メディアもこぞって「老後2000万円不足」問題をセンセーショナルに報じた。だが、金融庁の報告書を冷静にみると、高齢社会を取り巻く環境変化について整理し、「長期・積立・分散投資による資産形成」の必要性を説いたものであり、内容そのものに違和感はない。

 そうしたなか、私がつくづく痛感したのが、国民の金融リテラシーの低さである。少々旧聞に属するが、金融庁が2016年に実施したアンケート調査では、「これまでに金融や投資に関する教育を受けたことがあるか」という質問に対し、約7割がNOと回答。さらに、そのなかで「今後、金融や投資に関する教育を受けたいか」と尋ねても、約7割がNOと答えている。7割のうちの7割、つまり国民の2人に1人が「投資について勉強したこともないし、今後も一切勉強しない」といっているのだ。

 今回の「2000万円不足」問題を受けて、私のSNSにもコメントが寄せられているが、そのなかには「そもそも年金をそのまま運用しないで置いておけばいい」といった意見の一方で、「足りないのならFX(外国為替証拠金取引)をやればいい」といった意見も見られた。資産運用の効用をわかっていない一方で、投資を超えてレバレッジをかけて投資資金の何倍もの金額を取引する“投機”的な運用に走ろうという両極端な声まで聞かれるのだ。その背景にあるのは、「投資=悪」と考える人が依然多いという重たい現実にほかならない。

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