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田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の金融緩和は日本市場にどう影響するか

全面的な金融緩和の実施へ(中国人民銀行)

 IMF(国際通貨基金)は7月、2019年、2020年の世界成長率見通しをそれぞれ0.1ポイント下方修正した。2019年の成長率は3.2%としているが、その通りなら金融危機以来の低成長となる。

 米中貿易戦争の激化や、イギリスのEU離脱問題による混乱、大国の経済情勢に大きな影響を受ける新興国での景気・金融市場の不安定化などがリスク要因として指摘されているが、そうした中で、アメリカではFRB(連邦準備制度理事会)が7月31日、10年7か月ぶりに利下げを決定、9月も続けて利下げすることが確実視されている。アメリカは既に景気に配慮する政策を打ち出しており、中国の経済政策が注目されていたが、こちらも金融緩和を含め、景気により気を配る形での経済運営方針に転換するようだ。

 中国人民銀行は9月6日夕方、預金準備率の引き下げを発表した。9月16日より、リース、オートーリースなどのノンバンクを除くすべての金融機関を対象として、預金準備率を0.5ポイント引き下げる。そのほか、零細、民営企業に対する支援を促進する目的で、省クラス域内を経営地盤とする都市型商業銀行に対して、10月15日、11月15日と2回に分けて0.5ポイントずつ、合計1ポイント追加して引き下げる。

 中国人民銀行は、穏健な金融政策といった基本方針は変わらないと説明しているが、一方で、その効果について、全面的な引き下げによって8000億元、特定先に対する追加引き下げによってさらに1000億元の資金供給が行われるだろうと明言している。今年1月4日以来の全面的な金融緩和の実施であり、やはり、景気も重視するといった政策への転換とみるべきであろう。

 この2日前の9月4日、国務院常務会議が開かれ、新たな経済運営方針が発表されたが、現状の経済情勢について、「さらに複雑で厳しくなっている」と分析している。7月30日に開かれた中央政治局会議では「新たなリスクの挑戦に直面している」と説明しており、今回は、景気減速への警戒感の強い表現となっている。足元の景気の悪さ、米中貿易摩擦による先行き見通しの悪さが国務院に対して、景気対策への重要度を引き上げたといえよう。

 今回の常務会議であるが、ポイントは2つある。1つは、景気減速に歯止めをかけるため、6つの安定(雇用、金融、貿易、外資、投資、景気の先行き)業務をしっかりと行うという点であり、もう1つは、地方政府が積極的に特別債券を発行し、有効な投資を行い、内需の弱い部分を補強できるよう支援するといった点である。

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