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養育費不払いを許さない自治体が続々、立て替えて回収代行する例も

養育費確保を支援する事業イメージ

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 ひとり親家庭の貧困問題を受け、16年ぶりに最高裁判所が養育費算定表を改定。新算定表では増額傾向となったものの、課題はまだまだ多い。実際に養育費を受け取っている母子家庭は、わずか24.3%に過ぎないのだ(厚生労働省『平成28年度全国ひとり親世帯等調査』より)。そうした状況を受け、独自に対策に動き出している自治体もある。

“泣き寝入り”しているひとり親家庭を救済すべく、兵庫県明石市は、独自に養育費を立て替えて義務者から回収する制度を全国で初めて導入する。2019年9月、泉房穂市長は「養育費受取率を5年以内に50%以上にする」とし、養育費不払いの場合、履行命令や反則金の徴収、行政サービスの停止、不払い者氏名公表を検討する、と発表した。

 これには、“よく言ってくれた”と声があがる一方で、“プライバシーの侵害”“氏名公表などすれば職を失い、かえって貧困になるのでは”などの批判や疑問が噴出した。「明石市の養育費に関する検討会」の座長を務めている、ひとり親世帯の支援に詳しい早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は言う。

「第1回の検討会では、今年3月の条例制定を目指すという計画だったので、あまりに強権的な介入や性急なスケジュールに対して委員からも異論が出されました。そこで第2回からは2021年の4月条例制定を目指し、できることについて直ちに実行に移すこと、行政サービスの制限や刑事罰などは検討項目から外すことや、検討項目を整理し直すとともに、明石市の方で先に養育費を立て替える『明石市養育費公的立て替え制度』の創設の検討を始めることにしました」

 国の腰がそんなに重いなら、自分たちがやる──こんな明石市の取り組みに追随するように、ほかの自治体も動き出している。滋賀県湖南市は養育費の支払いを定めた公正証書や調停調書の作成にかかる費用を3万円まで補助するほか、回収を行う民間保証会社の保証料を初回分助成。

 東京都は、民間保証会社の保証料の半額を補助するとともに、市区町村との連携をはかる。大阪府も、公正文書の作成にかかる費用、または保証会社を利用した場合の保証料を補助するという。離婚問題に詳しい榊原富士子弁護士は、4月からの民事執行法の改正も大きな後押しになると語り、ある依頼者の例を挙げた。

「減額されたり支払いが不安定になったりして、ついに不払いになったケースです。元夫から養育費を回収しようにも、勤務先がわからなくなってしまったため、元妻は友人に協力してもらい勤務先をつきとめ、各所に奔走して資料を集め、不払い利息の計算もすべて勉強し、申立書を作って、自身で給与の差押さえをしました。しかしあまりにため込みすぎて払えず、元夫が執行に異議を唱える訴訟を逆に起こしてきたのです。そこからやむなく私に依頼され、結局和解をしたのですが、個人で強制執行までやり遂げられた、非常に珍しい例でした。

 これが今年4月から改正民事執行法が施行されると、調停調書や公正証書がある場合、裁判所を通じて銀行の預貯金情報や勤務先の名称等も把握しやすくなり、強制執行がしやすくなります。これまであまりの大変さに回収を諦めてきたひとり親には朗報ですね」

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