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コロナが介護施設の新規受け入れに影響 夫婦共倒れの恐れも

新規受け入れに消極的な介護施設も増えているという(イメージ)

新規受け入れに消極的な介護施設も増えているという(イメージ)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響は高齢者施設にも及んでいる。首都圏在住の50代後半の男性A氏が語る。

「脳梗塞で倒れた80代の父が入院中に要介護認定を受けました。退院後の介護を見据えて、実家近くの老人ホームを見学しようと思ったのですが、『新規入居は自粛している』と言われた。実家の母に父の介護を押しつけることはできませんが、かといって私の自宅で引き取るわけにもいかず、どうすればいいか悩んでいます……」

 淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏が指摘する。

「新型コロナの感染防止のために、特別養護老人ホームの多くが施設見学を自粛しています。とくに都内の特養は新規の受け入れに消極的です。民間の有料老人ホームでも入居希望者の見学を自粛し始めており、感染拡大が続けば新規入居ができないところは増えていくでしょう。夫婦2人の世帯で施設が見つからなければ、老老介護で共倒れになることを私は危惧しています」

 ケアタウン総合研究所代表の高室成幸氏が警鐘を鳴らす。

「入浴や排泄の介助といった介護職の仕事は、すべて濃厚接触にあたります。中高年のヘルパーのなかには自分の親の介護をする人も少なくなく、“働いている施設で新型コロナに感染したくない”“自分がウイルスをひろってきて親に感染させたくない”と考えて離職する人が出てくるでしょう。すると介護人材が不足してトイレやお風呂、着替えの介助すら受けられなくなったり、施設が休業に追い込まれて退去を迫られる可能性すら考えられます」

 政府や自治体は、適切な新型コロナ対策の“アピール”に躍起になっている。安倍晋三・首相は4月1日、「1世帯に2枚の布マスクを配布する」方針を明らかにしたが、すでに起こり始めている未曾有の危機に対する適切な対応とは言い難いだろう。

 我が身を守るためには、他人任せにしていてはいけない。医療・介護に伴うリスクを正確に把握し、最悪のケースを知ったうえで、各個人の冷静な判断が求められる。

※週刊ポスト2020年4月17日号

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