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コロナ後の相続 子や孫への生前贈与より自分で使い切る選択も

これまでは早めの相続対策が吉だったが(イメージ)

これまでは早めの相続対策が吉だったが(イメージ)

 コロナ後の新しい世界では様々な常識が一変するが、相続はどうするのが賢い選択になるのか。2015年の相続法改正では、基礎控除額が大幅に縮小され、資産総額が「3000万円+法定相続人の数×600万円」を超えると相続税の課税対象となった。都内に持ち家があるだけで課税対象になる可能性が高く、対策は「早ければ早いほどいい」が通説とされてきた。

 生前贈与はもっとも有効な対策のひとつだった。子や孫への教育資金の一括贈与は、学校の入学金や授業料などで30歳までに使い切るという条件があるものの、1500万円まで非課税だ。配偶者や子、孫に毎年贈与する暦年贈与は亡くなる3年以上前の分までが対象だが、年110万円まで贈与税が非課税になる。

 しかし、今後はこうした早めの対策が必ずしも正解とは限らない。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏が語る。

「コロナ禍による不況で会社が倒産したり、仕事を失ったりするリスクが高まり、先々の収支が不透明な時代が到来しました。親が財産の大半を生前贈与してしまうと、後に親の家計が苦しくなって子供に助けを求める事態も予想されます。そうなれば、兄弟間で“贈与が多かったお前が援助しろ”といった争いが起きかねない。

 また、相続は財産が少ないほど揉めるといわれ、自分の財産は自分で使い切ることも視野に入れ、綿密な相続計画が必要になるでしょう」

 先が見通せない時代になったからこそ、“先を見越した対策”には慎重になったほうがよい。

「そもそも基礎控除内であれば相続税は一切かかりません。まずは自分の資産を正確に把握して、生前贈与の必要があるかを知ることが第一です。

 子も親からの生前贈与をアテにするという考えは変える必要があります。これからは、親は親で、子供は子供で、互いに迷惑をかけないように収支計画を作成するという考え方が求められるのではないでしょうか」(橘氏)

 対策を講じたがゆえに負け組に転落するという事態だけは避けたい。

※週刊ポスト2020年6月12・19日号

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